Gaucher/Lien

グルマン温故知新

No. 795(2015.02.16発行)
次は誰? 明日を切り開く人物カタログ。

青森vs.リヨン。シェフの郷土愛に個性が覗く新顔フレンチ。

生まれ故郷だったり、修業先の地だったり……。ことさら標榜しているわけでないけれど、メニューを開くと、料理を口にすると、その地への料理人の思いがビシビシ伝わってくる。今回は、そんなシェフの郷土愛が個性につながっている、コスパ抜群のフレンチの新店を。

タブリエ・ド・サブール リヨン名物、牛の胃袋のカツレツ。胃袋は、マスタード入りのマリネ液に漬けた後、パン粉の下にもマスタードを塗っていて、その香味がアクセントに。定番のグリビッシュソース(タルタル)と、タマネギのコンフィが添えてあり、変化をつけながら味わえる。夜のおまかせ6,700円の前菜の一例。予約可。

アジのマリネとナスのピュレ さっと浅めにマリネしたアジは肉厚。そこにナスのほか、酸味をしっかりめに効かせた野菜のア・ラ・グレック(ギリシャ風)が添えてある。洗練されたモダンな盛り付けだが、味にメリハリがあって旨い。冷前菜の一例。

仔羊背肉のアンクルート アンクルート=パイ包み焼き。こういうクラシックな料理はシェフの得意とするところ。仔羊と一緒に、ベーコンやマッシュルームもパイで包んであり、羊と相性のいいタイムの風味も効いている。仔羊のジュのソースで。

店名の由来はシェフがゴーシェ=左利きだから。

オレンジ、緑、グレーを配した内装は、フランスの大好きなビストロが手本。

Gaucher

六本木一丁目

昼も夜も、リヨン郷土料理は外せない。

 リヨン料理を謳っているわけではない。が、夜のおまかせには牛の胃袋を使ったタブリエ・ド・サブールやグラドゥーブルといった郷土料理が必ず入るし、ランチメニューには、魚のすり身を使ったクネルが定番で載る。
 オーナーシェフ齋藤勉さんは、神田にあった名店〈エヴァンタイユ〉の出身。その後、渡仏し、リヨンとバスクで腕を磨いた後、横浜〈リパイユ〉のシェフに就いた。ここがリヨン料理のレストラン。昨年独立し、縛りのない、おまかせ一本のレストランにしたが、かの地の皿はやっぱり好きで外せない。客に求められれば、1皿、2皿と増える。タブリエ・ド・サブールは、日本人には重く感じられがちなビストロ料理だが、シェフは、名産のオニオンをコンフィにして添えるなど食べやすく工夫を凝らし、レストラン仕様の皿にする。もちろん、郷土問わず十二分に楽しめる店だが、その太っ腹な皿数や量にも、リヨンを感じずにはいられない⁉

青森県産小川原湖牛モモ肉ロースト メイン選びに迷ったらコレ。小川原湖牛は、青森の銘柄牛で、黒毛和種とホルスタインの交雑種。熟成肉流行りの昨今だが、上原シェフは熟成せず、火もしっかり入れて、新鮮な赤身肉のおいしさを追求。付け合わせは、軽井沢のアトリエノマドの無農薬野菜。料理は、夜4,700円のプリフィクスコースから。

青森県むつ湾直送イカのポワレ イベリコチョリソー ドライトマト そういえばイカも青森の名産でした。陸奥湾から届くスルメイカも、火入れと焼き目がうまく施されていて、軟らか。野菜は食感を残して、ゴロゴロ大きめだ。

リンゴのカクテル 青森の農園から届く無農薬の紅玉リンゴを皮ごとピューレにし、それを甘酸っぱいムースとソルベに。さらに白ワインで煮たコンポートとその煮汁の泡を重ねた、リンゴそのものよりもリンゴが力強いグラスデザート。

青森の実家は和食店。「フレンチを選んだのは、唯一の反抗です」とシェフ。

テーブル席はクロスが掛かり、ゆったりできる。

Lien

皿の主役は、シェフの故郷・青森の食材。

 主役に据えたのは、青森産の食材。メインの牛肉料理は、都内ではあまり見かけない青森のブランド牛のローストだし、デザートは、当地の有機農園から届いたリンゴを使ったカクテルだ。西荻の老舗〈ビストロ サン・ル・スー〉、パリの星付きレストラン〈エレーヌ・ダローズ〉などで経験を積んだ上原浩一さんは、青森県出身。自店を構えるにあたり、〈エレーヌ〜〉のシェフがそうだったように、自身もルーツとなる郷里の食材に敬意を払おうと考えたのだ。
 実家が飲食店ゆえ、素材選びには一日の長があるが、それでも牧場や農園に足を運んだという。きちんと火を入れたモモ肉のステーキは、牛肉らしい旨味がしっかり。テクスチャーを変えてグラスに詰めたデザートは、リンゴが香るように濃厚だ。青森食材の料理に限らず、どれも主役の味わいが力強い男前な皿。アミューズ、前菜2品、魚も肉もデザートもついて4,700円という価格もまた、男前です。

Gaucher

六本木一丁目
03・6277・7160
12時〜14時LO(月昼休)、18時〜21時LO。
ワインはフランス。グラス1,000円〜、ボトル4,500円〜。各種カクテルも。
ランチは1,530円〜5種。ディナーはおまかせで9皿前後6,700円〜。
テーブル22席。
カウンター席、個室なし。

東京都港区六本木3−4−33 B1。日曜・祝日休。交通:東京メトロ南北線六本木一丁目1番出口から六本木通りへ出て六本木駅方面へ徒歩4分。日比谷線六本木駅からも徒歩7分。料理人としてのキャリアのスタートは東京。自店を構えるときは東京で、の思いを叶え、昨年11月にオープン。夜は6,700円のおまかせ一本だが、そこはベテラン、要望があればフレキシブルに対応してくれる。

Lien

●池尻大橋
03・6413・8552
12時〜14時LO(土・日・祝のみ)、
18時〜22時LO。
ワインは仏産と国産で、自然派あり。
グラス680円〜、ボトル3,400円〜。
ランチ2,000円、ディナー4,700円。
ディナーのみパン代300円あり。
カウンター6席、テーブル12席。
個室なし。

東京都世田谷区池尻3−5−22 1F。月曜休。交通:東急田園都市線池尻大橋駅西口を出て、三軒茶屋方面へ。すぐの角を右折し、道なりに徒歩5分。移転前の〈レストラン オギノ〉、後のアトリエになった場所で、荻野伸也シェフから声をかけられ、昨年12月にオープン。1人なら、カウンターでアラカルトの皿を、知人や家族とならテーブル席でプリフィクスコースをと、使い分けできる。

photo/
Naoki Tani
text/
齋藤優子

本記事は雑誌BRUTUS795号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は795号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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次は誰? 明日を切り開く人物カタログ。(2015.02.16発行)

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