エンターテインメント

クローネンバーグのエロえぐい処女小説

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 795(2015.02.16発行)
次は誰? 明日を切り開く人物カタログ。

 えぐい。これほど先端メディア活用で面白く、しかしながら内容はえぐい、としかいえない、つまり、まさしく、これまで映画で培ってきたイメージ、いや、それ以上を活字として露悪的に展開して『CONSUMED』を書いてしまったのが、変態王デイヴィッド・クローネンバーグです。特に興味ぶかいのは、主な舞台が日本ということなのですね。『ヴィデオドローム』でも、架空ジャパニーズ・ポルノ『サムライ・ドリームス』を登場させましたが、今回もどこで仕入れたか、〈禁断介護〉シリーズで、老いたるペニスで、孫世代の女性との不遜なカラミをみせる徳田重雄にまで言及する情報通ぶり。徳田氏は、みうらじゅん監修の『壮快Z』のインタビュー&付録DVDで一挙に性的老人のアイドルのような存在となったAV男優です(Zは絶倫のZ)。
 ヒロインは、カナダ人ジャーナリストのナオミ・セバーグ、彼女はフランスのソルボンヌで起きた殺人事件の真相を追い続けています。彼女が得る多くの情報は、ネット上、PC上に飛び交い、また秘匿された映像記録です。妻を殺し、行方をくらましたとされる哲学者。しかも、殺しただけではなく、○○○。この伏せ字部分がえぐい。彼はどこに消えた? それが、日本だったというわけです。ソルボンヌ、そして○○○、といえば、一人の日本人留学生の名前が外国では相変わらず有名なので、その母国へ哲学者が逃亡するのは実に理にかなったことといえます。
 さらにえぐいのは、ナオミのパートナーといっていいネイサンが取材する相手が、手術をエンターティンメントとして捉えるマッド・ドクター&娘であること。ネイサンのペニス・データは3Dプリンターによって……。ろくでなし子さんを先取り? していましたね。さらにさらにえぐいのは、北朝鮮が存在感をいかんなく発揮することです。
 朗読CDの読み手が俳優のウィリアム・ハート、これまたエロい、えぐい、最高です。

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たきもと・まこと/スピエリッグ双子監督『プリデスティネーション』(原作『輪廻の蛇』)のプログラムに寄稿。

本記事は雑誌BRUTUS795号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は795号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.795
次は誰? 明日を切り開く人物カタログ。(2015.02.16発行)

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