ファッション

オリジナリティから生まれるウィメンズファッションの可能性。

No. 795(2015.02.16発行)
次は誰? 明日を切り開く人物カタログ。
サカイの2015年春夏コレクションはパリで披露された。大胆かつ複雑に異素材を組み合わせたファブリックに加え、立体的なシルエットと様々な要素が融合したワードローブを提案。

 2015年春夏のサカイはこれまでになく高揚感があった。ミリタリーとフラワープリント。そこにはニット、レース、布帛といった素材が縦横に使われ、複雑な構造となっている。このところのサカイの影響力は「世界へ向けて」という言葉がぴったりとくる。パリコレのショーはパワフルだし、ニットから発想した複雑なドレスはストリートにまで影響を与えている。デザイナーの阿部千登勢の活躍は昨年7月号の『アメリカン・ヴォーグ』で5ページにわたって掲載された。そこでは「デザイナー、母親、妻、経営者のすべてをエネルギッシュにこなす日本女性」と紹介されている。阿部はかつて8年間働いたコム デ ギャルソンについて「妥協しないこと。存在しないものをつくる楽しさを学んだ」と川久保玲の精神性を受け継いでいることを感じさせる。
 若い世代の代表ともいえるアンリアレイジの森永邦彦は、川久保玲を信奉していることで知られている。すでに日本では過熱気味の注目度だが、彼自身はパリコレに出ることは最初からの目標だった。2015年春夏のパリコレ初日に登場。テクノとクラフトワークを融合させたコレクションは、厳しい海外のジャーナリストやバイヤーから称賛の声が上がった。森永邦彦が提案するコンセプトは、21世紀のファッションのテーマとして受け止められたということではないだろうか。彼に、いま協力してもらっているところは? と質問すると「3Dプリンターでモノ作りをするマッドスネイル(アンリアレイジのショップ。家具、アクセサリー)、日本で唯一フォトクロミック染色をやっている京都の色整理加工会社の小杉染色、機能性インクの開発を行うソウケン」と一見ファッションと交わらないところと仕事をしているのが興味深い。コンセプチュアルな発想だけれど、服はリアルローズ。そこに潜むアート性、非日常性に私たちは引かれるのだろう。「これからも皆が驚くようなことをやりたい」と次を見据えた発言も。
 黒河内真衣子は三宅デザイン事務所で3年半働いた後、mameというブランドをスタートさせて5年目。展示会だけで着実に自分の世界をつくり上げていった。テーマはとてもパーソナルで、自身の周辺から物語を紡いでいく。旅で訪れた風景や出会った焼き物などにインスパイアされた服は、素材が吟味され、フェミニンなディテールが織り込まれている。刺繍は彼女が心を砕くところで、繊細な着物の刺繍を得意とする群馬県桐生市の工場で作られる。定番となっているジャージー素材のTシャツは、凝った花の刺繍が華やかな雰囲気を作り出している。最初の展示会から発表しているPVCの透明バッグには、クラフト感がある。
「服があふれている時代だから、着るものから離れたものを作りたかった」と言う。透明ビニールのバッグは2型から、5型に増え“ガラスのバッグ”と呼ばれるにふさわしい輝きを放っている。今シーズンから、パリのギャラリーで展示会をスタートさせた。「バイヤーの反応が早く、いくつかのショップが買い付けてくれた」と語るが、新しい動きへの期待感にあふれていた。
 長いあいだファッションを見てきたけれど、いまやファッション界の構造、ビジネスはすっかり様変わりした。ただクリエイティビティの面から見ると、新しい動きは常に注目されるし、変わり身の早い世界であることに変わりはない。私が新しい才能を見るとき大切にしているのは、オリジナリティということ。その観点からいえば、私たちは先達として世界に誇るデザイナーを輩出している。1973年、三宅一生は「一枚の布」を発表。一枚の布を纏うことで完成する服で世界に知られることに。1981年、川久保玲と山本耀司は「黒、脱構築、左右非対称」でパリコレに衝撃を与えた。3人ともそのオリジナリティで世界を「あッ」と言わせたわけで、今日でもその影響力は大きい。日本のデザイナーたちにとって、これ以上に幸運なことはない。ここで取り上げたデザイナーたちは、世代を超えて、モノ作りに対する真摯な姿勢がある。彼らはビジョンを持ち、「誰とも異なったやり方」で自らの世界を切り開いているところだ。

いまのファッションに必要なのは、オリジナリティと モノ作りに対する真摯な姿勢。

平山景子

【解説】

ファッションディレクター
ひらやま・けいこ/資生堂の企業文化誌『花椿』の編集長を務めながら、『パンク』展や『モッズ』展などファッションの展覧会を数多く企画してきた。現在は、フリーのファッションディレクターとして活躍中。

text/
Keiko Hirayama
edit/
Takuhito Kawashima

本記事は雑誌BRUTUS795号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は795号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.795
次は誰? 明日を切り開く人物カタログ。(2015.02.16発行)

関連記事