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「白川青史、ポパイのイメージの作り方」スタイリスト長谷川昭雄とのタッグの秘密

No. 794(2015.02.02発行)
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撮影したての写真を取材直前までセレクトしていたスタイリスト・長谷川昭雄さんとフォトグラファー白川青史さん。スタイリストなしでは始まらない“チーム戦”のファッション写真。今の『ポパイ』には不可欠なビジュアル作りの根幹をなす2人の、ほかには真似のできない“関わり方”に、ホンマさんが迫ります。

ホンマタカシ 
世界的にいわゆる格好いいファッション写真ってもういらないのかな? 『ポパイ』を見ていると特にそう思うんだけど、どう?
長谷川昭雄 
何をもって格好いいと判断するかは難しいですが、僕らが『ポパイ』でやっているのは“明日着たい服”を見せることなので、外国のような場所でモデルが格好つけて写るよりも、東京なら東京のままで日常的なことが撮れればいいかなと思っています。
ホンマ 
やっぱり白川くんといえば望遠スタイルだよね。ちなみに、いつからこの手法なの?
白川青史 
藤田一浩さんが師匠なのですが、アシスタントの頃「俺と同じことをしていたらダメだ」と諭されていたので、妙に違うことをやらなきゃと試行錯誤していて。そのとき、好きな望遠で撮ろうと思ってトライしたら、その写真が褒められたのがきっかけです。それと、被写体とコミュニケーションを取るのが得意ではないので、遠くから狙うスタイルは自分に合っていると思って(笑)。
ホンマ 
そのときから望遠だ。この“前ボケ“の写真に対してはどう?ファッション写真の流れでいくと、今“前ボケ”が新鮮に感じたんだよね。

長谷川 
白川くんは意外と嫌がるよね(笑)。でも、それよりも、写真の歪みをなくしたいから、望遠で撮りたいんじゃないかって思うときがあります。
ホンマ 
これってハセくんが指示しているんだ(笑)。どんなふうに撮影を進めているの?
長谷川 
今では事前に打ち合わせはやらないです。『ポパイ』だと40ページくらいまとめて撮ることが多くて、モデルも数人固定で数日やるので撮影現場でテストもできるし、一度うまくいかなくても後日再撮します。白川くんが撮り始めたものを見ながら、その場で撮りどころを詰めていく感じです。
ホンマ 
そこまでハセくんがコントロールしているんだね。そうなると白川くんがほかのスタイリストとやるときはどうなの?
白川 
撮り方は同じで、写真の詰め方は人によって合わせます。
ホンマ 
被写体とコミュケーションがしっかり取れたり、心が通じたなって思えた人はいる?
白川 
ポパイ』のガールフレンド特集で撮った小松菜奈さんは撮影時で3回目だったので、いよいよ通じ合えたような気がします。千葉の小湊鉄道の上総中野駅で撮った写真も遠くからこう動いてほしいと思ってたら写真のように動いてくれた。撮りたいものを察知してくれたんですかね。

ホンマ 
遠く離れていて何も言ってくれないから向こうが何かやってくれたのかもね、女優さんだし(笑)。でも、気づいてくれたんだよ、白川くんのスタイルに。篠山紀信さんや荒木経惟さんのように自分で積極的に被写体を動かすタイプもいれば、僕は映画のように三脚に4×5で、勝手にちょっと動いてくれたところを撮るのが好きだしね。ところで、『ポパイ』がリニューアルしてから最もうまくいった写真とか、好きなものってあるのかな?
長谷川 
単純にスタジオで撮った写真ですかね。それまでほぼやってなかったから。ロケなら、一昨年のNY特集の〈ブルックスブラザーズ〉のページです。マンハッタンのフラットアイアンで撮ったのですが、アートディレクターとも事前に話して、このコーナーで出合い頭にこんな雰囲気で、とだけ決めて撮影しました。

ホンマ 
これってたくさん撮る?
白川 
結構何回も。15回くらい?
長谷川 
もっとやってるよ! ただ、こういう写真は、例えばコーヒー片手にこぼすくらいの勢いでやった方がリアルだし予想外の写真も生まれるのに、服を気にしてカップに中身が入ってない状態でやるとうまくいかないですよね。
ホンマ
偶然も積極的に入れようとするんだね。白川くんはどれが好きなの?
白川 
僕も同じです。
ホンマ 
この写真もいいね、ランニング、曲がり角。

長谷川 
下馬の方に好きな曲がり角があって(笑)。7、8年にわたって何度も撮っているんです。
ホンマ
2人の原点のようなこの写真いいねー。
長谷川 
ポパイ』は担当ページが多いというのはありますが、雑誌全体を考えると、すっと馴染む写真がいいと思っていて。『ポパイ』に強い写真はいらないですね。
ホンマ 
雑誌全体を見られてるからだよね。
長谷川 
そうですね、そこまで関われているからだと思います。全体は崩さずに、作る画が『ポパイ』のカラーになればいいなと。

ホンマタカシ

1962年東京都生まれ。2011年から12年にかけて個展『ニュー・ドキュメンタリー』を国内3ヵ所の美術館で開催。写真集多数、著書に『たのしい写真 よい子のための写真教室』(平凡社)がある。現在、東京造形大学大学院で客員教授も務める。2月末に恵比寿映像祭、4月に太宰府天満宮アートプログラムに参加。

白川青史

しらかわ・せいし/1976年神奈川県生まれ。フォトグラファー。大学、写真専門学校、スタジオ勤務を経て、2003年藤田一浩氏に師事。04年よりフリーランス。『POPEYE』ほか、さまざまなファッションにまつわる媒体で活躍中。

長谷川昭雄

はせがわ・あきお/1975年東京都生まれ。スタイリスト。akio hasegawa associates代表。喜多尾祥之氏に師事。『POPEYE』ファッションディレクター。創刊から携わった『MONOCLE』でも、昨年までファッションディレクターを務めた。

text/
Tamio Ogasawara

本記事は雑誌BRUTUS794号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は794号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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