La Paix/golosita.

グルマン温故知新

No. 793(2015.01.13発行)
夢の値段2015

まっさらな気持ちがすがすがしい新人オーナーシェフの店へ。

日本橋のフレンチで10年、広尾のイタリアンで5年。開業からシェフを務め、それぞれの店の礎を築いた料理人2人が独立開業。和の要素を取り入れたフレンチ。イタリアンというジャンルごと取っ払った店。オーナーシェフならではの表現が見もの。“外食初め”に。

ブーダンノワールとジビエのパイ包み焼き 香り高いトランペットタケのソースで。ローストしたリンゴの凝縮した果実味と安納芋のピュレの自然な甘味が濃厚で力強い肉の旨味とパイの風味に寄り添う。写真はエゾシカで作ったものだがほかに雷鳥や山鳩も使う。〈メルヴェイユ〉時代から作り続ける冬のスペシャリテ。皿は有田焼〈カマチ陶舗〉のもの。

その日の野菜を使った一皿 フルーツトマトやカリフローレは生で、ジロールタケやインゲンは焼いて、ビーツは酢漬けで、と、いろんな野菜を一皿に。クラシックなブールブランソースも野菜と合わせれば軽やかに食べられ、ワインにもよく合う。

柿とみかんのデザート 松本さんの故郷、和歌山の果物が登場。とろりとした完熟柿とフロマージュブランに、ミカンジュースのグラニテを添えて。お椀に見える黒い器は〈スガハラ〉のガラス食器。料理はすべて10,000円のディナーコースより。

ベルギーでの修業経験もある松本さん。

地下に広がるレストラン。気鋭の書道家・清水耀白のモダンな作品が壁を飾る。

La Paix

●三越前

日本の文化を表現するフレンチ。

 敏腕サービスマン・岡部一己さんが展開する〈オーグードゥジュール メルヴェイユ〉で、開業時からシェフを務めた松本一平さん。10年を節目に独立、「日本人ならではのフレンチ」を掲げ日本橋に店を開いた。ディナーは8皿10,000円のコース一本江戸の伝統野菜を取り入れ、昆布だしや山椒も使う。素材や調理法だけでなく、器や設えも「和」が基調。フレンチを通じて日本の食材や文化を発信することこそが、日本人でフランス料理をやる自分がすべきこと、と思い至ったからだ。創作にはしたくない。だからブールブランソースなど基本のソースはきちんと押さえ、後進にも伝える。フレンチなのに格子戸を設えてしまうなんて大胆! でも流行りのカウンターは設けず、ガラス越しに厨房が見える造りにした。お客さんとの距離を縮めつつ、料理に集中できる環境を整えるなど、こまやかさや生真面目さも随所に。外国人にもモテる店になるな、きっと。

三重 伊賀牛100%のハンバーグ 生でもおいしいイタリアの赤タマネギのみじん切りが隠し味。粗挽きの肉を噛み締めるたびに感じる、ほどよい辛味と瑞々しさがアクセントになる。兵庫県加古川市産、日本一のこだわり卵を使った完璧な半熟目玉焼きがどんと2個のる。卵にナイフを入れて、とろけ出す黄身をソース代わりにどうぞ。3,000円。

クルーダイオーラ アルトゥーロ風 IN TOKYO トマト果汁にバジルやフェンネルを加え、火入れをせずに作る爽やかなスープに、キプロス産のブルガー小麦を加えた“食べるスープ”。ミラノのトラットリア〈ラ・ラッテリア〉アルトゥーロシェフのレシピで。1,900円。

羅臼 白子のフライ アラビアータソース 極薄の衣に包まれたぷりっぷりの白子が、あつあつ、濃厚、クリーミー。フリットではなくパン粉を付けて揚げることで、ソースとの絡みもバッチリ。辛いソースはもみじおろしのイメージだとか。さすが。1,800円。

以前にも増して楽しそうに仕事をする長谷川さん。

L字のカウンターは毎夜笑いの絶えない長谷川さんのステージ。

golosita.

●恵比寿

劇場型カウンターの“旨いもん屋”。

 店名はイタリア語で「食い意地、食いしん坊」の意味。メニューを眺めて、なるほど、となる。「世界一おいしい特大アンチョビとカルピスバターのブルスケッタ」「カラスミ目玉焼き」「伊賀牛100%のハンバーグ」
……。「食欲」なんて言葉では足りない、「食い意地」に即、火がつく料理ばかり。〈クリオーゾ〉でシェフを5年、麻布界隈の食通とイタリア料理好きに支持されてきた長谷川慎さんの店である。開業前にはイタリアに渡って食べ歩きをし、国内各地も旅した。料理人としての原点に立ち返り、日本の食材を再発見。そして決めた。自分が食べたいものを出す店にしよう、と。イタリア料理かどうか、なんて考えない。振り切れた分、料理の勢いは増した。席は厨房を囲むL字形のカウンター。アイランドキッチンで腕を振るう長谷川さんの口からも、旨いものの話が出てくる、出てくる。食いしん坊による食いしん坊のための店。万歳!

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La Paix

●三越前
03・6262・3959
11時〜13時30分LO、18時〜21時LO。
ワインはフランス産のみ。グラス1,100円〜、ボトル6,000円〜。
ランチ3,500円と5,000円、ディナー10,000円(サ別)。
テーブル10卓21席。内8席は個室使い応相談。

東京都中央区日本橋室町1ー9ー4 B1。水曜休。交通:東京メトロ三越前駅A1出口(日本橋口)から人形町方面に徒歩2分。松本さんとは20年来の盟友、〈メルヴェイユ〉でも共に10年を過ごした田中智人さんが支配人を務める。21席の小さな店だが厨房、ホール合わせてスタッフは7名。サービスを含め、カジュアルながら正統派のフレンチを貫く。ワインは約170種。10種以上をグラスで提供。

golosita.

●恵比寿
03・5794・8568
18時〜22時LO。
ワインはイタリア産中心。グラス1,000円〜、ボトル5,000円〜。
前菜1,500円前後〜、パスタ2,000円前後〜。コペルト1,000円。
カウンター10席。

東京都渋谷区恵比寿1ー18ー9 TimeZoneヒルトップビル4F。不定休。交通:JR恵比寿駅西口から山手線沿いの道を目黒方面に5分。シェフ1人、サービス1人。こまやかな接客はできないが、ゲスト一人一人が占有できるロッカー型のクロークを用意するといった工夫も。ワインはイタリア産を中心に各地の銘醸品も揃える。コースはおまかせのみ、要予約で10,000円〜。

photo/
Yuji Kanno
text/
佐々木ケイ

本記事は雑誌BRUTUS793号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は793号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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夢の値段2015(2015.01.13発行)

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