エンターテインメント

スピン(栞)に凝った、犯罪映画と悪女の本。

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 789(2014.11.01発行)
男の定義

 最近購入した本としては格段の重量本が、タッシェン版『FilmNoir:100 all−time Favorites』(2014)です。持ち上げたとき持病の腰痛再発の恐れがあるとはいえ、まちがいなくこれを振り下ろせばあなたを殺せます。あるいはあなたに殺されます。すばらしいのは、本の中でも殺人がわんさかにゃんさか起こっていることですね。
 さて、重量計がないので実際重さがどれぐらいかわからないのですが、表紙のタイトルはインク厚盛りに加えて中頁も688頁分、紙にたっぷりとインクがのっかっていて、インクの重さだけでも相当かと思われます。
 本サイズを実測すると、天地281㎜×左右231㎜×厚62㎜の丸背マンモス本ということになります。映画監督ポール・シュレイダーの序論他でフィルム・ノワールのパースペクティブを示したあと、『カリガリ博士』から『ドライブ』まで、ここ百年の犯罪映画百本が時代を追って並ぶわけですが、日本映画としては、黒沢明『天国と地獄』、北野武『HANA−BI』がランクインしています。この選択に議論がある以上に、たとえば香港映画がなにも入っていないのが不満を感じますが、この種のベストものは常に異論続出なので、意外な、あるいは観たことのない映画のランクインを楽しむべきでしょう。製本上のポイントとして、スピン(栞)です。しかもこれがフィルムを模したデザインとなっていて、妙に可愛いのです。掲載写真が小さいのでスピンまで見えるかどうか不安ですが、黒い心で拡大してみてください。
 黒い心用にもう一冊スピン本用意しました。『BAD GIRLS OF PULP FICTION』(Running Press/2002)です。ペーパーバックの表紙から、しどけなく、ふてぶてしい姿態を集めた、よくある本の一冊ですが、ポイントは、こちらは85㎜×70㎜×13㎜というミニサイズ。工夫はスピンの先にバッドガールお約束のハイヒールが付けられているというこまやかでサディスティックな心配りにあります。

エンターテインメントカテゴリの記事をもっと読む

たきもと・まこと/ジュネの新作『天才スピヴェット』で〈永久運動〉に久しぶりに遭遇。科学オンチでも興奮。

本記事は雑誌BRUTUS789号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は789号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.789
男の定義(2014.11.01発行)

関連記事