アート

モノを作ることは、誰もが持つ本能。人間は誰もがモノを作るべきだと思うわ。

BRUTUSCOPE

No. 789(2014.11.01発行)
男の定義
©Stephanie Quayle All Rights Reserved
©Stephanie Quayle All Rights Reserved
©Stephanie Quayle All Rights Reserved
すべてが新作。英アーティスト、ステファニー・クエールが日本で制作した作品展覧会が開催。
ステファニークエールイギリスのカントリーサイドにある、自然豊かな農場で生まれ育つというバックグラウンドを持ち、動物に焦点を当てた作品で知られるアーティスト。その作品は、単に動物のカタチをコピーしたものではなく、生の、まるで命が宿っているかのような動物の存在を、見る者に感じさせる。今秋、日本に滞在し制作した新作の展覧会が開催される彼女に話を聞いた。
──Q なぜ動物モチーフの作品を作るのですか?
──A 農場で育ったという生い立ちからでしょう。動物たちに囲まれていると彼らに魅了されずにはいられません。動物は魅惑的でかつ、滑稽でもあり、感受性が強くそして純朴で、人間の本質がそのまま反映されているように思えます。
──Q 今の作風はいつから始めたのでしょうか?
──A 彫刻家としての私は石膏、木材、オブジェを使用した彫刻、金属と多様な媒体を試みましたが、粘土を手にした時にこれだと感じたのです。粘土の、あたかも空間に線を描くイメージで作品を制作できる直接的で瞬間的なところが気に入りました。
──Q 作品制作で、大事にしていることは?
──A 粘土に息吹を吹き込むことです。出来上がった彫刻作品はすべて、「生の粘土」と、「主題」の調和です。
──Q 作品を作ること以外で、生活の中で大事にしていることはありますか?
──A 夫のダレンは大切な人。私の良き理解者、インスピレーション源であると同時に最も厳しい評論家でもあります。姉妹たち、家族、友人、そして私にとって特別な場所、マン島の美しい自然と密接なコミュニティも大切なものです。
──Q 日本の印象を教えてください。
──A SUGOI!(スゴイ!)が私の印象です。幸運にも信楽の素晴らしい大自然の中、木々に囲まれた丘の上で、秋色に変化してゆく色合いを見つめながら暮らすことができました。貴重な経験で、精神の高揚を感じています。出会った人たちは誰もが親切で私たちを快く迎えてくれ、思いやりにあふれ、本当に頭の下がる思いです。
──Q 今回、日本で制作もしたと伺っています。どこで、どのような制作をしたのでしょうか?
──A 滋賀県立陶芸の森で勉強させていただきました。粘土や焼成の技術はイギリスとは大きな相違点があり、信楽の伝統的な薪窯やガス窯を使用しての制作は大変に勉強になりました。窯を開けるたびに、まったく予想もつかない結果が私を待っていました。粘土を焼き上げる工程は、魔法を連想させます。この地方原産の粘土、伝統的な焼成法を使い粘土彫刻を信楽で制作できたことは名誉であり、貴重な体験でした。
──Q 今回の日本での展示はどのような展覧会ですか?
──A 会場には動物たち、彫刻、デッサンが所狭しと並ぶ予定です。現代人は自然とのコネクションを喪失していると感じます。映像としてレンズを通し映画で見る「自然」、動物園で体験する「自然」ばかりです。展覧会を通じて、都会に大自然のエネルギーと畏敬の念といったものを持ち込むことができたらと思います。
なぜ、ステファニーさんは作品を作り続けるのでしょうか?
モノを作ることは、誰もが持つ本能であり、人間は誰もがモノを作るべきだと思います。何かを敬愛する、よりよく理解する、探求することがモノ作りの過程です。私は決して作り上げた作品に満足することがありません。今こうして制作活動を続けられることは最高の幸せなのです。彫刻家以外の自分は想像できませんから。
アートカテゴリの記事をもっと読む

『Stephanie Quayle』展

11月3日〜30日、POST(東京都渋谷区恵比寿南2−10−3 1F☎03・3713・8670)。12時〜20時。月曜休。入場無料。ステファニークエールが滋賀県の信楽に滞在して制作した新作で構成される展覧会となっている。また、展覧会に合わせて、初となる作品集も出版予定。

STEPHANIE QUAYLE

ステファニークエール1982年イギリス生まれ。英国の名門芸術大学スレード・スクール・オブ・ファイン・アートを首席で卒業し、英国王立芸術学院で修士号を取得。現在も農場の自宅兼アトリエで創作活動を続ける。

text/
Yuji Hamada

本記事は雑誌BRUTUS789号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は789号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.789
男の定義(2014.11.01発行)

関連記事