エンターテインメント

ルー・リードの股間、バナナの放つ影響力。

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 785(2014.09.01発行)
強い酒、考える酒

 ルー・リードの初来日コンサート、日時場所の記憶は曖昧ながら、鮮やかによみがえるシーンは、客が投げたタオルを乾布摩擦よろしく前後2回の股間摩擦、それを客席に投げ返したことです。なんてカッコいい
 タオルも急に宙を舞ったと思ったら、不意打ちのように〈ルー・リードの股間〉の汗と匂いをブリーフ+パンツ越しに一気に吸収、純度を増したエクスタシーに悶絶したのではないでしょうか。想定外の運命に見舞われたタオルを主人公にして、ルー・リードの股間小説、あるいは股間詩を書きたいという思いがその時、一瞬アタマをよぎったことを今、思い出しました。タオルの類的記憶まで掘り起こせば、壮大な汗のエロス史となるはずでした。ウソですが。
 書籍化されたルー・リードの全詩集(ただし、アルバム『エクスタシー』まで)としては、2000年刊行の『Lou Reed : Pass Thru Fire: The Collected Lyrics』(HYPERION)、そしてロバート・ウィルソンの依頼で、盟友の美術家、ジュリアン・シュナーベルとともに作り上げたエドガー・アラン・ポーに自作を絡めた寸劇集成といった趣の『TheRaven(大鴉)』(Grove PressBooks)があります。
 前者はレイアウト、タイポグラフィが凝ってますが、成功しているとは言いがたく……。後者の刊行はオーディオ版(CD2枚組)リリースに対応したものです。オーディオ版には、デイヴィッド・ボウイ、ウィレム・デフォー、スティーヴ・ブシュミ他、多くの友人、そして彼に連れ添い、最期を看取ったパートナーのマルチ・アーティスト、ローリー・アンダーソンが協力しています。
 詩人ルー・リードの幸運は、まず初期に〈ヴェルヴェット・アンダーグラウンド〉というスペシャルな場で楽曲「ヘロイン」、「毛皮のヴィーナス」といったデカダンスを存分に開花させたことでしょう。ファースト・アルバムはウォーホル・デザインのバナナのポップで卑猥な外装のもとにリリースされました。

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本記事は雑誌BRUTUS785号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は785号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.785
強い酒、考える酒(2014.09.01発行)

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