エンターテインメント

非モテでも、四角関係でも、女たちはたくましく生きていく。

BRUTUSCOPE

No. 784(2014.08.16発行)
松浦弥太郎の男の一流品カタログ

ノア・バームバック監督『フランシス・ハ』、ホン・サンス監督『ソニはご機嫌ななめ』公開。

同じく女性主人公の生き方を描いた作品ながら、『フランシス・ハ』と『ソニはご機嫌ななめ』には異なる味わいがある。

ニューヨークのフランシスと、韓国のソニが繰り広げる、それぞれの恋物語。

『フランシス・ハ』

何だか尻切れとんぼなタイトルの『フランシス・ハ』——「ハー(her)」じゃないんです、「ハ(ha)」なんです———は、クエンティン・タランティーノが2013年のベスト10に挙げるなど、非常に高い評価を受けているノア・バームバックの監督作。27歳のダンサー見習い、フランシスはニューヨークブルックリンで親友とルームシェアをして暮らしているが、そのハッピーな日々は唐突に終わりを迎える。はずみで彼氏と別れ、親友とはルームシェアを解消するはめになり、住まいを転々とするフランシス。意固地で見栄っ張りな性格から、「非モテ」の烙印を押されてしまう彼女の姿は、しかしなぜだか観ているこちらを元気づける。フランシスを捉える視点は、ジム・ジャームッシュニューヨークインディーズの系譜を引き継いで温かく、そしてフランシスに扮したグレタ・ガーウィグは、ヌーベルバーグのヒロインさながら躍動感いっぱいに。そう、ここには人を揺り動かす生命力がみなぎっている。
 

『ソニはご機嫌ななめ』

一方、本国でホン・サンス監督最大のヒット作となった『ソニはご機嫌ななめ』は、周囲の男性たちを魅了するキュートな大学生、ソニの奔放な恋——なんと四角関係!——をみずみずしい会話劇で描き出す。ホン・サンス作品らしく、やはり艶めかしくておかしいのは、嘘と本音が飛び交う酩酊描写。しかし、ソニも男たちも酔って痴態をさらけ出しながら、常に手玉に取られ、きまり悪い思いをするのは男たちというこのリアリティは何だろう? 窮屈でわびしい男たちを尻目に、女はいつだってのびのびとたくましい。

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『フランシス・ハ』

監督:ノア・バームバック/出演:グレタ・ガーウィグ/デヴィッド・ボウイ「モダン・ラヴ」をBGMに、フランシスはニューヨークを疾走する。ダンサーを夢見るフランシスの不器用な日々が愛おしい、恋と友情の物語。9月13日、ユーロスペースほかで全国順次公開。©Pine District, LLC.

『ソニはご機嫌ななめ』

監督:ホン・サンス/出演:チョン・ユミ/大学教授、元カレ、先輩…翻弄される3人の男たちとソニの関係をコミカルに描く。加瀬亮主演『自由が丘8丁目』の公開も控える“韓国のロメール”ホン・サンス監督作。8月16日、シネマート新宿ほかで全国順次公開。

text/
Yusuke Monma

本記事は雑誌BRUTUS784号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は784号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.784
松浦弥太郎の男の一流品カタログ(2014.08.16発行)

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