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イーノ・ハイドが2枚連続でアルバム発表。豪快な制作秘話を公開。

BRUTUSCOPE

No. 783(2014.08.01発行)
アウトドア大全

即興演奏や突発的なアイデアから生まれた作品は、意外やポップ⁉

1970年代にシンセサイザー奏者としてキャリアをスタートさせたブライアン・イーノ。アンビエントミュージックを確立し、デヴィッド・バーンとアフリカ音楽を探求。プロデューサーとして参加したデヴィッド・ボウイベルリン3部作など、イーノが取り組んできたプロジェクトは常に前例がないため、誰もが発表当初は“実験的”と評するが、後にポップフィールドにおいて定番となる音楽が多い。2000年以降アート色の強いプロジェクトが多かったため、2年ほど前から噂されていたアンダーワールドカールハイドとのバンド結成のニュースに大きな驚きがあった。さらには今年、アルバムを2枚連続で発表。なにかとニュースの多い2人にイースト・ロンドンにあるイーノのスタジオで、2人のなれそめから話を聞いた。

カール・ハイド 
僕はアンダーワールドの活動と並行して、絵を描いているんだけど、96年くらいのエキシビションかな。最初に僕の作品を買ってくれたのは、なにを隠そう、あなたなんだよ!
ブライアン・イーノ 
えっ! そうなの⁉
ハイド 
そりゃ忘れもしないよ。最初の客がブライアン・イーノなんだから(笑)。
 

その後、2人が実際に共演するようになったのは、2009年からイーノが指揮をとり、オーケストラからアフリカ音楽のグループまでが参加した完全即興のライブパフォーマンス『THIS IS PURESCENIUS』に、ハイドを招いてからだという。

イーノ 
リハーサルの時、2人ともアートスクール出身だから、芸術に関してかなり真面目な話をした。ファインアートのアイデアを、どうやって音楽に反映させられるか、とかね。
ハイド 
『THIS IS PURE SCENIUS』は、次になにが起こるかわからない、言い換えれば“二度と同じ演奏なんかするもんか”という意識が強くて。
イーノ 
音楽家は一度うまく演奏できて、観客の反応がいいと、同じことを繰り返す。それでオーディエンスはリピーターになるんだけど、そのうち両者が同じ空間にいても、観客は受け身になって、当事者感覚を失ってしまう。なにが起こるかわからない即興のステージというのは、再現できない。そうなると観客も“今なにが起きているのか?”と考え、当事者意識が強くなるんだ。

挑戦的なパフォーマンスがイーノ・ハイド『SOMEDAY WORLD』へと繋がっていく。

ハイド 
3年くらい前かな。ブライアンのスタジオへ遊びに行った時、制作中の曲を聴かせてもらっていたら、急にギターが弾きたくなり、その場でセッションになった。それはダンスとアフリカ音楽、ロックが混合されたようなビートで。アンビエントの印象が強かったから驚いたな。
イーノ
僕がキミに対して一番驚いたのはギターが弾けるってことだったよ(笑)。
だから、『SOMEDAY WORLD』はブライアンマテリアルが大本になっているんだ。

確かに『SOMEDAY WORLD』は、イーノの作品としては、久々にポップな歌の詰まった作品になっている。このセッションを気に入り、終わらせたくなかったイーノは、ある強硬手段に出る。

イーノ 
レーベルから3週間プロモーション期間が欲しいと言われてね。“そんなことに時間を費やすなら、もう1枚アルバムを作ってその制作風景をマスコミに公開しようぜ!”と提案したんだ。
ハイド 
そう言われたこっちは驚いたけどね(笑)。それで完成したのが『HIGH LIFE』。ブライアンマテリアルもあったけど、これはバンドのメンバー全員で顔を合わせながら作っていったんだ。

しかし、レコーディング作業は一筋縄ではいかなかった様子。『THIS IS PURE SCENIUS』と同様、偶然生まれた演奏や、その場で生まれたアイデアを音楽にしている。ポップなダンスアルバムとしても聴ける作品制作の裏舞台とは。

ハイド 
ブライアンは、新しいアイデアを思いつくたび、それをホワイトボードに書き込んでいく。例えば、「強い感情のみを」と「丘の上に街を作ろう」とか、曲のイメージに繋がるような標語。あとは、単純に「立ったまま作業する」とか、レコーディングスタイルのこともあったけどね。
イーノ 
作業を進めていくうち、その妨げになるようなことに気づく。回避して、スムーズにいくようにするため、気がついたことを書いていった。
ハイド 
その中に鍵盤奏者のフレッド・ギブソンへ「フレッドは片手だけで演奏すること」というルールがあったんだけど(笑)。
イーノ 
彼は演奏も素晴らしく、音楽的な理論も当然持っている。もちろん10本の指をすべて使って鍵盤を弾くから、空間が満たされちゃうんだ。今回のセッションでは、それがプラスになるとは思えなかったから、試しに片手で弾いてもらうようにした。縛ってもよかったかもね。
ハイド
フレッドは困惑してたけど(笑)。
イーノ 
面白い話なんだけど、いつも普通にしていることに制限をかけると、才能ある人は間違いなく新たになにか発見するものなんだ。
ハイド 
『HIGH LIFE』が個性的なのは、心地いいけど、少し変なところかもしれないな(笑)。
ハイド 
ブライアンは、新しいアイデアを思いつくたび、それをホワイトボードに書き込んでいく。例えば、「強い感情のみを」と「丘の上に街を作ろう」とか、曲のイメージに繋がるような標語。あとは、単純に「立ったまま作業する」とか、レコーディングスタイルのこともあったけどね。
イーノ 
作業を進めていくうち、その妨げになるようなことに気づく。回避して、スムーズにいくようにするため、気がついたことを書いていった。
ハイド 
その中に鍵盤奏者のフレッド・ギブソンへ「フレッドは片手だけで演奏すること」というルールがあったんだけど(笑)。
イーノ 
彼は演奏も素晴らしく、音楽的な理論も当然持っている。もちろん10本の指をすべて使って鍵盤を弾くから、空間が満たされちゃうんだ。今回のセッションでは、それがプラスになるとは思えなかったから、試しに片手で弾いてもらうようにした。縛ってもよかったかもね。
ハイド 
フレッドは困惑してたけど(笑)。
イーノ 
面白い話なんだけど、いつも普通にしていることに制限をかけると、才能ある人は間違いなく新たになにか発見するものなんだ。
ハイド 
『HIGH LIFE』が個性的なのは、心地いいけど、少し変なところかもしれないな(笑)。

『HIGH LIFE

イーノハイド名義で6月に発表した新作。ビーチ・ボーイズ風のコーラスが気持ちいい「R
ETURN」、電子加工されたアフロビート「DBF」など。2人の独創性が交差したアルバム。

KARL HYDE

カールハイドアンダーワールドのフロントマン。2012年ロンドンオリンピックでは開会式の音楽監督を務める。昨年ソロアルバム『EDGELAND』を発表。また、イーノとデジタルアーティストのLUKASZ KARLUKとアプリ「ENO・HYDE」を発表した。

BRIAN ENO

ブライアン・イーノ
1948年イギリス生まれ。74年までロキシー・ミュージックに参加。脱退後ソロ作品『AMBIENT 1:MUSIC FOR AIRPORTS』(78年)などを発表、また他のアーティストのプロデュースも手がける。2010年以降、ほぼ毎年新作を発表。今年、アンダーワールドカールハイドと『SOMEDAY WORLD』『HIGH LIFE』を立て続けに発表、ファンを驚かせた。

『SOMEDAY WORLD』

4月に発表され、早くも前作となった作品。カールのボーカリストとしての実力を聴かせる「WITNESS」や、ファンキーな「WHEN I BUILT THIS WORLD」など聴きどころ十分。

photo/
Tessa Angus
text/
Katsumi Watanabe

本記事は雑誌BRUTUS783号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は783号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.783
アウトドア大全(2014.08.01発行)

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