生活・スポーツ

お国変われば。

生島淳の僕しか知らないアスリートの秘密

No. 782(2014.07.15発行)
辛いから。旨いから。

 せっせと韓国プロ野球の取材に通っていたことがある。結構、楽しかったのだ。日本とは球場の雰囲気が違っていて、応援席には演台があり、球団所属の応援団長と脚を露わにした4人のチアリーダーが出てきて、応援の音頭を取る。中でも釜山ロッテ・ジャイアンツは熱狂的な応援で知られていて、試合終盤に老若男女が「釜山港へ帰れ」を合唱しだした時にはさすがにびっくりした。ちょっと感激したけどね。
 もっと驚いたのは、試合前の食事を選手と記者が一緒の食堂で食べることだ。アメリカ日本ではそんな習慣はない。どちらかといえば、選手にとって記者は敵だ。韓国の球場では学食みたいな雰囲気の部屋で、肉だの、チゲだの、キムチだの辛い「ザッツ韓国料理」をいただくのである。
 しかも、およそ試合開始の2時間前だというのに、選手はごはんをおかわりするし、どんどん食べる。「食いすぎだよ……。試合前なのに」と思わず言おうかと思ったが、やめておいた。みんな幸せそうな顔をして食べていたからだ。ある選手は、「本当は自分で肉を焼いて食べた方がおいしいんだけどね」と不満げ。いつか、本当に球場内食堂で焼肉を始めるのではないかと思う。どうして一緒に食べるかというと、「選手とマスコミが気軽に話せる環境を作って、良好な関係を作るため」というから、お国が違えば、ずいぶんと考えも違うのでした。

いくしま・じゅん/スポーツジャーナリスト。著書に『箱根駅伝コトバ学』など多数。

illustration/
土車大八

本記事は雑誌BRUTUS782号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は782号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.782
辛いから。旨いから。(2014.07.15発行)

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