ファッション

自然史的に解剖されたプラダの世界。

BRUTUSCOPE

No. 782(2014.07.15発行)
辛いから。旨いから。
ハロッズ・ナイツブリッジの5階で開催された『プラダスフィア展』。展示期間中はウィンドウ40ヵ所を「占拠」し、過去のコレクションをミックスして展示。2012年春夏プラダ・ドンナのコレクションにインスパイアされた、車を使用した演出も見られた。

仕掛け人のマイケル・ロックに展示の意図を聞く。

 プラダの歴史を徹底解剖  そんなコンセプトで、この5月、ロンドンの百貨店ハロッズ・ナイツブリッジで『プラダスフィア』と題された展示が開催された。これまでファッションのみならず、アート、建築、映画を通じてそのビジョンを表現してきたミウッチャ・プラダの世界を、さながら自然史博物館のごとく「解剖」し展示するという大がかりな試みに挑戦したのは、約15年にわたりプラダの仕事をしてきたグラフィックデザイナーのマイケル・ロック。
「ミセス・プラダクリエイションの進化の様子を、アーカイブから映像や画像、商品を使って徹底的に解剖した。長年、プラダの仕事をしてきたから、素材は馴染み深いものばかりだったけれど、それを改めて吟味する作業は楽しいものだった」
 展示のイメージは、ミウッチャ・プラダが決めたヨーロッパの植民地主義のブルジョワなムードを採用。マイケルはキュレーターとして展示するアイテムを決め、ライターとしてカタログの文章の執筆を担当した。毎シーズン発表するコレクションの表現法とはあえて違う方法を取りたかったというマイケルプラダの世界を自然史に見立て、これまで発表したコレクションピースを起源、標本、構造、類型、進化、観察と6カテゴリーに分けて、その背後にあるコンセプトや歴史、素材とクリエイションの関係を、細かく解剖していく方法で展示を構成した。
「ファッションの世界では、シーズンごとの差や、クチュールと既製服の差といった“違い”が重要だけれど、ミセス・プラダの表現には“違い”に相反する一貫性がある。自然史博物館のような見せ方をすることで、その一貫性を掘り下げた」
 例えば一つの大きなテーマにセクシーさがある。あるシーズンは控えめに表現することがあれば、あるシーズンは大胆にセクシーさを表現するときもある。
「最終的な見え方は違っても、その根底には彼女の一貫した思想がある。それがファッション、アートへのアプローチ、空間設計といったことすべてに表れていて、だからこそ、一つの世界観として成立する。見る人にそれを伝えたかった」
 ファッションデザイナーでありながら、映画や建築、文学など異なる分野の才能とコラボレーションすることを重視してきたミウッチャ。
「彼女を特別な存在にしているのは、その飽くなき知的好奇心。常に他の分野で活躍するアーティストのクリエイションに興味があって、それが自分にとって、プラダにとって何を意味しているのかを考えながら、自分がデザインする服を着てくれるオーディエンスのことを常に忘れない。そのバランス感覚が絶妙。ミセス・プラダと仕事をしていると、誰にでも理解できる娯楽性の高い作品を作りながら、高度な映像技術を駆使したアルフレッドヒッチコックのことをよく思い出すんだ」
 同時にファッションに対するアンビバレンス(両面的な感情)がある。
「これは僕の勝手な分析だけれど、ミセス・プラダは人生における大切なことに対して、ファッションが意味することに常に疑問を持っている。それを自分のクリエイションに活かすことを容認しているから、面白いものができると思う」

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MICHAEL ROCK
マイケル・ロック/ニューヨークのデザイン事務所〈2x4〉のクリエイティブディレクター。〈プラダ〉〈ナイキ〉、カニエ・ウェストなどをクライアントに持つ一方、コロンビア大学で教鞭も執る。

photo/
Brigitte Lacombe (portrait)
text/
Yumiko Sakuma

本記事は雑誌BRUTUS782号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は782号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.782
辛いから。旨いから。(2014.07.15発行)

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