鮨 ます田/鮨 たかはし

グルマン温故知新

No. 778(2014.05.15発行)
親と子

2014年オープンの若手鮨職人をマークせよ。

名店のDNAを継承する鮨界のサラブレッドが、この春相次いで独立開店。片や、あまたの名店がしのぎを削る銀座に。片や、じわじわと実力派の鮨店ができつつある青山に。いずれも若く、イキのいいことこの上なし。今、要注目の鮨喰いねえ!

握り 上の写真は上段左から時計回りに/マコガレイ、コハダ、煮ハマグリ、卵焼き、車エビ。下の写真は同じく/キス、マグロ赤身、スミイカ、アナゴ、バフンウニ。この日のマグロは壱岐対馬産。現在鮨飯に使っているのはコシヒカリ。秋田産と新潟産をブレンドしているが、テイスティングして随時変えている。

サヨリと貝のサラダ 旬のサヨリと北寄貝、シャキシャキとした食感の水菜を、ポン酢でサラダ仕立てに。「酒の肴になるものばかりでなく、さっぱりとした生野菜を使った一品も食べたいというご要望を受けて、出すようになりました」

アジのたたき 脂ののり始めたアジは、ミョウガやショウガ、大葉、アサツキといった香味野菜と合わせ、たたきにしてさっぱりと。温かい品も織り交ぜたつまみは季節に応じて内容が変わる。料理はすべて、おまかせの一例。

鮨 ます田

表参道

物腰穏やかな新鋭は、日本一有名な鮨店出身。

 全国に名を轟かせる鮨の名店の多い北九州・小倉の中でも、とびきりとされる〈天すし〉で3年。同じく小倉〈もり田〉を経て上京し、〈すきやばし次郎〉で9年。〈鮨 ます田〉の主人、増田励さんの経歴から受ける印象は、ずばり「エリート!」だ。
 が、厳しい修業時代には「毎年辞めたいと思っていました」とご本人。そのたびに、積み重ねてきたことを無駄にはできない、と思い直し、偉大すぎる師匠に学ぶ。そうして今年、34歳で念願の自身の店を構えた。
 握りは、人肌の車エビを、その都度殻をむき、握ってから2つに切って供する師匠譲りのスタイル。一方、「卵焼きは、数寄屋橋と配合を変え、より濃厚にしました」。塩を少し強めに効かせ、ややしっかりめに握られたシャリは、口の中ではらりとほぐれ、ネタと交わる。
「師匠から最も影響を受けたのは、鮨と真摯に向き合う姿勢」。早くも熟練の風格漂う鮨店は、予約困難度も師に迫る可能性大。

握り 上の写真は上段左から時計回りに/カスゴ、スミイカ、コハダ、中トロ、マグロ赤身。下の写真は同じく/サヨリ、アナゴ、卵焼き、ムラサキウニ、小柱。鮨飯にはあきたこまちを使用。赤酢を使っているがシャリには色がつかないものだそうで風味もまろやか。旬のカスゴは淡路から。卵焼きはしっとりと甘く。

カツオの刺身 あっさりとした脂の、春のカツオは勝浦から。刺身で出せるのは、鮮度に自信があればこそだ。ほか、軟らかく煮た子持ちヤリイカや、旬の甘鯛の酒蒸しなど手をかけた酒肴も登場する。料理はすべて、おまかせの一例。

煮ダコ 扱うネタの中で、唯一産地を指定して仕入れているのが、タコ。「明石産しか使わないと決めています。周りのゼラチン質の厚みも旨味もしっかりしていて、ほかの産地のものと比べると、違いは歴然です」と髙橋さん。

鮨 たかはし

銀座

激戦区・銀座に現れた若き新鋭。

 散々言われてご本人はもはや“耳にタコ”だろうが、店主の髙橋潤さんは現在27歳。30代で独立しても「若い、早い」という印象を受けがちな鮨の世界において、20代で、というのは、騒がれるのも致し方なし。
〈かねさか〉で2年、〈鮨 さいとう〉で4年修業。〈さいとう〉
時代、彼の提言により、いくつかのネタの仕込み方が見直されたという逸話は、早くから才覚を表していた証しだろう。写真の煮ダコもその一例で、火入れの時間や方法を変えたことで、周りはしっとり、中は程よい軟らかさだ。必要な仕事は施すが、「素材の持ち味が直球で伝わる料理が好きだから」と、肴はシンプルに仕上げる。主役の握りは「キリッとした味を心がけています」と、シャリに使うのは赤酢と塩のみ。噛み締めればネタの味がくっきりと際立つ。
 敷居もお値段も高くなく、ここなら初めてでも、一人でも怖くない。こんな鮨屋が銀座に誕生したとは嬉しい限り。

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鮨 ます田
表参道

ショッピングついでに思い切って奮発!な日に。
2人で55,000円〜。上戸なら60,000円位の心づもりで。
03・6418・1334

●東京都港区南青山5−8−11 BC南青山PROPERTY B1。11時30分〜14時、17時〜23時LO。日曜・祝日休。交通:東京メトロ表参道駅から徒歩5分。カード使用可。カウンター6席のほか、個室6席も。2014年1月30日開店。おまかせ(つまみ5品前後、握り16〜17貫)24,840円〜。握りのみの場合は18〜19貫19,440円〜。ビール1,000円、日本酒1合1,000円。ほか、シャンパーニュやワインも取り揃えている。おまかせの価格については「“高い”と言われることもありますが、それに見合うと思っていただけるような仕事を日々心がけています」ときっぱり。築地で毎朝、仲買さんとコミュニケーションを取るのが日課だ。

鮨 たかはし
銀座
日曜日夜の銀座だけれどどうしてもお鮨!な時に
おまかせ+そこそこ飲んでも2人で30,000円〜。
03・3561・6503

●東京都中央区銀座1−14−14。18時〜21時LO。水曜休。交通:東京メトロ銀座一丁目駅から徒歩5分。カード使用可。カウンター8席。2014年3月10日開店。おまかせは(つまみ6品前後、握り10貫)12,960円〜。瓶ビール756円、日本酒は1合1,296円〜。銘柄は時期によって替わるが、この日は入手困難な北海道の「まる田 特別純米」や、燗酒のおすすめとして「麒麟山 伝統辛口」など、約6種がスタンバイ。内装は昔ながらの技法で仕上げられており、天井は網代、壁は聚楽塗りに大谷石の正統派。まな板もカウンターと同じヒノキだそう。現在は夜のみの営業だが、体制が整えば昼も開けたい、と髙橋さん。待ち遠しい。

photo/
Hisashi Okamoto
text/
小石原はるか

本記事は雑誌BRUTUS778号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は778号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.778
親と子(2014.05.15発行)

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