エンターテインメント

ダニー・ボイル演出の秘密がこの一冊に。

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 777(2014.05.01発行)
居住空間学2014

 ベネディクト・カンバーバッチなる、中世の高貴な宗教的装飾品を思わせる名前が、デイヴィッド・ベッカム以来のフィーバーを、極東の腐、おっといけない貴女子の間に引きおこしたのは、昨年の来日時ですよね。いうまでもなく、コナン・ドイルが創作した名探偵シャーロック・ホームズを21世紀ロンドンへ移しかえたTV版『シャーロック』に主演したことが、カンバーバッチのスーパー・ブレイクの始まりでした。
 そのフィーバーのおかげもあって、わが国でも限定公開されることになったのが、ナショナル・シアターの舞台の記録映像版『フランケンシュタイン』(2011)です。これにカンバーバッチがジョニー・リー・ミラーとダブル・キャストで出演しているのです。興味ぶかいのは、ダブル・キャストのありようです。相互変換キャストと言うべきユニークな方式。つまり、二人の俳優がフランケンシュタイン博士と彼が作り上げたクリーチャーの役を日によってチェンジして演じると言うもの。小生が観たのは、カンバーバッチがクリーチャーを演じた時のもの。床上で延々と苦闘し、誕生から歩行にいたるプロセスを演じるカンバーバッチの肉体の悶えと悲鳴が聞こえてきそうでしたが、彼は脱いでもすごいんです。さらに興味ぶかいのは、舞台演出を手がけた映画監督ダニー・ドイル(『トレインスポッティング』ほか)は『フランケンシュタイン』を利用して、あるオーディションを敢行したことです。劇伴は初めてという〈アンダーワールド
の二人の性格、才能を見極め、ロンドン・オリンピックのセレモニーに参加させて、共に協力しあえるかどうか、という確認行為です。
 1980年前後のオリンピックなら、ボイルは確実に〈クラッシュ〉と協同作業に突入していたでしょう。それぐらいの〈クラッシュ〉ファンでもあったようです。ボイルがエイミー・ラファエルに答える形で構成された『Creati
ng Wonder』(faber and faber/2013)は、オリンピック・セレモニーの企画進行を覗く意味でも必読ですよ、誰かさん。学生時代に演出したのは、連続殺人鬼ジョン・クリスティものというのがボイルらしいです。

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No.777
居住空間学2014(2014.05.01発行)

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