ライフスタイル

創作と暮らしを、軽やかに楽しむカリフォルニア流ボヘミアン。

チャンスとセンスとリラックス。元気づくLAに住む、ということ。

No. 777(2014.05.01発行)
居住空間学2014
緑溢れる、半屋外のリビングルーム。寝起きするのはエアストリームの中。裏手にシャワーやバスルームも自作した。植物の声を音楽に昇華させるアーティスト、マイリースがコツコツ築いたLA版・エデンの園だ。
ヴィンテージのエアストリームはわずか2,000ドルで購入。ただし、「安いだけにボロボロ(笑)。清掃や改修が大変だったわ」。いまやマイリースの大切な基地だ。
キッチンのカウンターも自作した。調理はプロパンガス。ちなみにマイリースの母は映画関連会社の経営者。隣の母屋で生活するが、たまに娘のキッチン兼リビングで息抜きを。
エアストリームの一角が、仕事場。現在ロンドンの大学で博士号取得中の夫の力も少々借りて、みごと緑化させた空間が目の前に。
壁の色がキュートな元車庫側のベッドルーム。隣の部屋は自分用のレコーディングスタジオ。ここで音楽制作に打ち込んでいる。
お手製の洗面台。植物を扱うアートしかり、屋外のシャワーしかり、年間通じて温暖なカリフォルニアならでは。まさに楽園だ。

植物と交信するアーティストの、アナザー・グリーン・ワールド。

「ここはもともとガレージだったの」と愉快そうに説明するのは、環境デザイナーにして音響アーティストのマイリース。その元車庫だった建物は扉を外し、オープンエアのリビングにした。外は緑溢れるガーデン。そして、ガーデンの奥にはヴィンテージのエアストリームを設置した。
「コンクリートで固めた空き地だったので、熱がこもって強烈に暑かった!」という元ガレージだが、今では樹木や草が生い茂り、野菜やハーブは摘み取られるのを待っている。ひんやりとした木陰のもと、小さな池をフナが泳ぎ、カメが静かにあたりを窺っている。
「野ネズミやカマキリが棲みつき、アライグマやハヤブサまでやってくるようになった」と微笑むマイリースだが、入口の扉を押し開けると、外には落ち着いた邸宅が整然と立ち並んでいる。ここはカーサイ・スクエアと呼ばれる、ビヴァリー・ヒルズの南東にある閑静な高級住宅地。その中で人知れず増殖したささやかなバイオシステム。それがマイリースの住まいなのだ。
 ファンタジックな緑の小宇宙で、彼女が寝起きする場所はヴィンテージのエアストリーム。「窓越しの緑に囲まれて眠っていると、自分が構築した世界に包まれている、と実感するの」とも。それもそのはず、植生のデザインから搬入、家具の製作から池や内装の施工まで、彼女のハンドメイド。細い腕で木工機械を扱い、体重ほどもある重いセメント袋を引きずりながら、7年前から一人でコツコツ造り上げたという。
 肩書は、植物の心を電子音楽で表現するアーティスト。1970年代に行われた、微弱電流を流し、波形の変化でサボテンの気持ちを読み取る実験をご存じだろうか? マイリースの創作活動はいわばその進化形だ。独自に開発したソフトウェアを使い、草が示す感情の機微を音楽で可聴化する。植物と交信する彼女は、豊穣な「マイ・オーケストラ」の中で暮らしているのである。

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Mileece
アーティスト

マイリース
NYやフランス、LA、イギリスほかで幼少時代を過ごし、ロンドンのミドルセックス大学で音響デザインを修める。2013年にはロンドンのキュー王立植物園で展覧会、また、NYのMoMAで行った植物インスタレーションや音楽、映像のパフォーマンスも大盛況。http://www.mileece.is/

photo/
Yoko Takahashi
text/
Mika Yoshida&David G. Imber
edit/
Kazumi Yamamoto

本記事は雑誌BRUTUS777号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は777号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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居住空間学2014(2014.05.01発行)

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