人生仕事

完璧にしすぎないっていう主義があるもんですから。|仲條正義

TOKYO80s

No. 776(2014.04.15発行)
一世一代の旅、その先の絶景へ
PHOTO / SHINGO WAKAGI

仲條正義(最終回/全四回) 

1968年からだとすると46年前に『花椿』の仕事を始めたことになります。エディトリアルのアイデアは一貫していたというか、時代の反映だと思ってましたが、写真が変わればガラッと変わりますからね。当時は新しいフォトグラファーが大体向こうから来る、降ってくるみたいな感じで見つかるんですから、こんなに楽な仕事はないですよ(笑)。宣伝部から「ああしろ、こうしろ」
とも言われなかったですしね。初期は言われましたよ。「こんなに暗い写真撮って」とかね(笑)。「なんで新しいことをやっちゃいけないんだ」と怒ったりね。それから40年間やれたというのは、一つは資生堂がそこまで真剣に僕のことをチェックしていなかったのかな(笑)。決して上等なレイアウトとか品の良い何とかっていうのは、やったことがないんです。どこか生煮えだったり、あんまり完璧にしすぎないって主義があるもんですから。その代わり流行っているやつはやらないとか、ちょっと人がやらない、それがちょうどいいかなと逆にやっていると当たったりね。50年代に革命的な新しさというものが生まれたと思うんですよ。ちょうど、戦後、戦争が終わった頃に珍しいものが生まれたというようにね。今はね、変にこう何か理屈っぽかったり、お利口そうで雑誌が面白くなくなっちゃっている感じがする。保守的になっちゃったんですよね。今我々が見えているものではない、ちょっとした水面下の、ちょっとした面白いものが実はいっぱいあるんだと思うんですが。若い人と付き合わないと、そういうのは見えてこないから「今、どうなの」っていう話を飲んだりとかしながらね。『花椿』はずっとこのまま続くかと思ったらね、なんとなく終わることになって、「そうですか、そろそろ年貢の納め時か」ってね。雑誌の表紙の絵を描くとか、チャリティでなんかの展覧会に出してくださいとか、今はそんなのばっかりで刺激があるようなものはしてないですが。人生振り返るとやっぱり運が良かったと思います。世の中がガンガンと拡大していく時に社会に出られてね。苦労を知らなかった分だけ備えもないですけどね。ただね、今60歳の人は歳をとった時に大変ですけれど、僕は81歳だからもうお迎えが来るのを待っているだけだから(笑)。あと10年どうしよっかっていうことを考えないでいいから楽ですよ。(了)

仲條正義
なかじょう・まさよし/1933年生まれ。グラフィックデザイナー。2011年まで『花椿』AD。

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本記事は雑誌BRUTUS776号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は776号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.776
一世一代の旅、その先の絶景へ(2014.04.15発行)

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