北出食堂/sakeria 酒坊主

グルマン温故知新

No. 775(2014.04.01発行)
東京で見る、買う、食べる、101のこと。

自然派ワインでも日本酒でも、締めはカレー、な2軒。

雨後のタケノコのごとくできている日本酒バルや自然派ワインの店。でも、今行きたいのはこんな店。昨年オープンしたこの2軒、料理は共にジャンル不問ながら、自家製調味料やスパイスの使い方に個性あり。しかもカレーがおいしいんです。締めは決まりでしょ!

無添加牛すじ煮込みカレー NYにはない、北出さんオリジナル。カレーのベースとなるルーと、牛すじ煮込み用のルーを別々に作り、牛すじを煮込んでから、一つにして仕上げる。とろとろの肉が同化しているかのようなカレーは、ビシッとスパイスを効かせていて、コクがあるのに不思議なほどシャープな味。野菜のフリット添え。980円。

タコス チキンのハーブ煮 自家製タコスの具は8種からチョイス。オレガノが効いたこのチキンは、味もしっかり入って、それだけでも十分。そこにさらに野菜とカッテージチーズを和えてある。なんとチーズも自家製! 2種のサルサで。400円。

岩手山短角牛100%ハンバーグ つなぎなしのハンバーグにかかるのは自家製天然酵母ソース。発酵させたリンゴの皮や、蕎麦の返しに近い“返し醤油”などを合わせ、ソース自体を発酵させているから、日により微妙に酸味や苦味が違う。必食。1,200円。

北出食堂

●馬喰町

NY仕込みの“和”な隠し味、効いてます。

 製薬会社の倉庫をリノベートしたインテリアに、自然派ワインが並ぶ黒板メニュー……。いわゆるニューヨークスタイルのダイニング⁉ かと思いきや、違いました。実はここ、ブルックリンにある居酒屋〈bozu〉にいた北出茂雄さんが店主を務める姉妹店。メニューには、タコスに交じって、カレーやハンバーグも! しかも“返し醤油”や“柚子サルサ”なる〈bozu〉仕込みの“和”な自家製調味料が効いていて、これがお馴染みのメニューを一味も二味も違うものにしているのだ。
 例えば、なんとも言えない醤油の風味が食欲をそそるハンバーグのソース。リンゴの酵母を作り、それを“返し醤油”などと合わせてさらに発酵させて作る。調味料のみならず、とことん手がかかる。が、それもここ流。一番人気のカレーも、ルーを2種類仕込むところから。実は北出さん、本業はDJ。「休業中」と力説するが、当分、本業には戻れそうもない⁉

海鮮だしのカレー 魚のアラやエビの殻、ソテーしたマイタケなどでベースを作り、ピューレにしたレンズ豆を加えて…と書いても、実は食べられないかも。食材が同じでも毎回スパイスのブレンドが違うから。ただ、個性的なのはおわかりいただけるかと。カレーはルーを使わないサラッとしたものが毎日1~2種。これは850円。

豚ロースのオリエンタル焼き 「タンドリーチキンからイメージを膨らませた皿」。シナモン、香沙などのスパイス、タマネギ、ヨーグルトなどでマリネして焼いた豚ロースはしっとりと、スパイスの風味爽やか。バルサミコソースも八角風味。ハーフ850円。

揚げ牡蠣とピータンの酸辣だれ 名産地、兵庫県の坂越から届いた大ぶりの牡蠣に、花椒、香沙などが丸ごと入った黒酢ベースのたれ。ふっくらした牡蠣を一口。スパイスがゴツッと歯に当たり、ピリッときたかと思えば、ピータンがねっとりと。1,000円。

sakeria 酒坊主

代々木公園

坊主の店主はスパイス使いも酒揃えも大胆不敵⁉

 カウンターの向こうには、同じ銘柄の酒瓶がずらり。でも、同じに見えて、醸造年度や米の種類がすべて違う。中には12種類揃う銘柄も! 吉祥寺の人気店〈にほん酒や〉にいた前田朋さんが構えたマニアックな酒揃えの店は、料理もありきたりな居酒屋メニューにあらず。「食べることが大好きなので、自分が食べたいものを作っているだけ」と言うが、どれもジャンル不問の刺激的なおいしさ。香辛料が粒のままゴロゴロ入った牡蠣料理は予想をしのぐパンチ力。お馴染みのソースだと油断していると、不意にスパイスに遭遇する。そして、カレーはさらりとしつつ、シャープな辛味の奥で魚介のダシとレンズ豆がとろりと絡み合う。料理人としての出発点が中国料理だったからだろうか。種類を絞り、大胆かつ切れ味鋭くスパイスを効かせた料理は、どれもセンス良し。中でもカレーは、酒を目当てに訪れて、ヤミツキになって帰る客多数の必食メニューだ。

photo/
Naoki Tani
text/
齋藤優子

本記事は雑誌BRUTUS775号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は775号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.775
東京で見る、買う、食べる、101のこと。(2014.04.01発行)

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