自然派ワインでも日本酒でも、締めはカレー、な2軒。
雨後のタケノコのごとくできている日本酒バルや自然派ワインの店。でも、今行きたいのはこんな店。昨年オープンしたこの2軒、料理は共にジャンル不問ながら、自家製調味料やスパイスの使い方に個性あり。しかもカレーがおいしいんです。締めは決まりでしょ!
北出食堂
●馬喰町
NY仕込みの“和”な隠し味、効いてます。
製薬会社の倉庫をリノベートしたインテリアに、自然派ワインが並ぶ黒板メニュー……。いわゆるニューヨークスタイルのダイニング⁉ かと思いきや、違いました。実はここ、ブルックリンにある居酒屋〈bozu〉にいた北出茂雄さんが店主を務める姉妹店。メニューには、タコスに交じって、カレーやハンバーグも! しかも“返し醤油”や“柚子サルサ”なる〈bozu〉仕込みの“和”な自家製調味料が効いていて、これがお馴染みのメニューを一味も二味も違うものにしているのだ。
例えば、なんとも言えない醤油の風味が食欲をそそるハンバーグのソース。リンゴの酵母を作り、それを“返し醤油”などと合わせてさらに発酵させて作る。調味料のみならず、とことん手がかかる。が、それもここ流。一番人気のカレーも、ルーを2種類仕込むところから。実は北出さん、本業はDJ。「休業中」と力説するが、当分、本業には戻れそうもない⁉
sakeria 酒坊主
●代々木公園
坊主の店主はスパイス使いも酒揃えも大胆不敵⁉
カウンターの向こうには、同じ銘柄の酒瓶がずらり。でも、同じに見えて、醸造年度や米の種類がすべて違う。中には12種類揃う銘柄も! 吉祥寺の人気店〈にほん酒や〉にいた前田朋さんが構えたマニアックな酒揃えの店は、料理もありきたりな居酒屋メニューにあらず。「食べることが大好きなので、自分が食べたいものを作っているだけ」と言うが、どれもジャンル不問の刺激的なおいしさ。香辛料が粒のままゴロゴロ入った牡蠣料理は予想をしのぐパンチ力。お馴染みのソースだと油断していると、不意にスパイスに遭遇する。そして、カレーはさらりとしつつ、シャープな辛味の奥で魚介のダシとレンズ豆がとろりと絡み合う。料理人としての出発点が中国料理だったからだろうか。種類を絞り、大胆かつ切れ味鋭くスパイスを効かせた料理は、どれもセンス良し。中でもカレーは、酒を目当てに訪れて、ヤミツキになって帰る客多数の必食メニューだ。
- photo/
- Naoki Tani
- text/
- 齋藤優子
Share:
本記事は雑誌BRUTUS775号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は775号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。