エンターテインメント

フランス漫画界のエースに日本のオタクも脱帽!?

BRUTUSCOPE

No. 773(2014.03.01発行)
なにしろラジオ好きなもので②
来日したら必ず行きたかったという中野ブロードウェイ。取材の2時間前から1人で散策をスタートし、レアな『ニンジャ・タートルズ』のフィギュアを1,500円で見事ゲット。
100円コーナーに並ぶお気に入りの日本の漫画を物色。『ベルセルク』は「恐怖」の描き方に圧倒され、『ドラゴンボール』はデザインやストーリーに深く感動したという。
最も影響を受けたのは、主人公ペコの気持ちになって夢中で読み切った『ピンポン』と、少年時代に画の迫力に衝撃を受けた『北斗の拳』。一番好きなキャラは、ケンシロウの宿敵ラオウ。
海外版のコミックが出版され人気を集めた『ビーストフォーマー』のフィギュアシリーズ。既に自宅のコレクション部屋にコンプリート済みと聞き、まんだらけの店員さんも唖然。
フランス人監督によって実写化されるなどフランスでもファンの多い『コブラ』の画集に出会う。「ここまでモテるタイプの男性キャラクターって、BD界には不思議と存在しないんだよ」
見失ったかと思いきや、ガチャガチャコーナーでイモムシに目を輝かせるヴィヴェスを発見。●まんだらけ中野店/東京都中野区中野5−52−15☎03・3228・0007。12時〜20時。無休。

BD作家バスティアン・ヴィヴェスが見つめる日本カルチャー。

プールで出会った女の子に惹かれる、主人公の心情の移り変わりを美しい色彩で描いた『塩素の味』で第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の新人賞に選ばれたBD(バンド・デシネフランス語圏の漫画)作家バスティアン・ヴィヴェス。幼い頃から日本の漫画やアニメに触れ続け、さらにフィギュアコレクターという顔も持つ。パリの自宅には、フィギュア(その数2000以上)専用のコレクションルームまであるという。

中野ブロードウェイは狭い場所に店が密集してて、彷徨っていると偶然とんでもない掘り出し物に出会えるんだ。まるで狩りをしてるような気分になれる場所だよ。僕がこうしておもちゃが大好きなのも、漫画を描いているのも、幼い頃に母が買ってくれたフィギュアの影響が大きい。フィギュアを動かしながら模写したり、10代の頃は『ストリートファイター』のゲーム中にポーズボタンを押し、その静止画を模写してたよ。あとは宮崎駿のアニメを見た影響も大きくて、自然とアニメの世界に入っていったんだ」

ヴィヴェスが現在描いている最新作のアクション漫画『Last man』は12歳の少年が憧れの格闘技トーナメントに挑む冒険物語。日本の漫画から影響を受けたという、その制作方法とは。

「この作品はアニメスクール時代の同級生2人と組んで、3人で作っているんだ。彼らも日本の漫画の大ファンでね。でもただ単にフランス人日本の漫画の描き方を真似たとしても日本の作品には敵わない。だから僕たちは、僕らなりのスタイルで日本のエッセンスを取り入れようと思った。プロ漫画家を目指す2人の少年を描いた『バクマン。』は、自分にとっては漫画のマニュアル本みたいなもの。『バクマン。』のように原作者と作画者を分け、チームで漫画を作ってみたいと編集者に伝えたんだ。毎週続きを読める日本の漫画雑誌のように、WEBのポータルサイト上で週に20ページ単位で漫画を発表し、本にはシールの付録を付けたり巻末に読み切りエッセイを入れたりもした。BD作品は普通1年くらいかけて描くものだし、1人の作家が単行本を1冊出すのが主流だったから、最初は周囲に驚かれたよ。だけどしばらく連載を続けてみて、やっぱり週に20ページというペースは僕たちには無理だってことに気づいたんだ(笑)。自分に合ったペースで漫画を描き続けるのがべストだね」

エンターテインメントカテゴリの記事をもっと読む

BASTIEN VIVES

バスティアン・ヴィヴェス/1984年フランス生まれ。映像学校でアニメーションを学んだ後、2007年に本格的にBD作家としてデビュー。09年『塩素の味』でアングレーム国際漫画祭新人賞を受賞。13年同作品の日本版が刊行され、第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞。BD界の新世代作家として注目が集まる。

『ポリーナ』

バレリーナを目指す主人公ポリーナが恩師ボジンスキーや友人、恋人との出会いと別れを通じ、少女から大人へと成長する姿を描いた作品。2011年にフランスでBD書店賞とACBD批評グランプリを受賞。バスティアン・ヴィヴェス著/原正人訳/小学館集英社プロダクション/1,890円。©2011 Casterman

photo/
Chikashi Suzuki
text/
Satoko Muroga

本記事は雑誌BRUTUS773号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は773号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.773
なにしろラジオ好きなもので②(2014.03.01発行)

関連記事