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陛下に「エベレストは曇ってました」としか言えなくて。|三浦雄一郎

TOKYO80s

No. 772(2014.02.15発行)
日本一の「お取り寄せ」最終案内
PHOTO / SHINGO WAKAGI

三浦雄一郎(最終回/全四回)

メタボから普通の65歳の体形体調に戻ろう、そしてエベレストに登ろうと決心しました。ところが試しに藻岩山っていう531mの山に登ってみたら、途中でのびて動けない。登るまで5年あったんですが、これでエベレストどうなるんだって気が遠くなりましたよ。けれど僕のモットーは「これ以下はない」でしてね。朝起きると足首に1㎏ずつ重しをつけて、代々木公園を歩きました。1日8時間寝てたとしても、12〜13時間は起きてる。起きて、動く、歩くことが全部トレーニングになればジムに行く必要もないと。次の目標は富士山。半年経ったら体重も5㎏減ってフラフラになりながらも登れて。富士山を4、5回登り、2年経ってからヒマラヤ行って、4000、5000、6000、7000m。とうとう70歳でエベレスト登れました。目標っていうのは、ものすごいパワーになるんですよ。終わるともう一回登りたくなりました。曇ってたんでね。園遊会で天皇陛下にお会いして「エベレスト、本当に70歳で大変でしたね。頂上の景色はいかがでしたか?」と聞かれても「曇ってました」、これしか言えないもんだから(笑)。で、もう一回75歳で本当に登れるのかなと。5年置きというのも、非常に都合が良くてね。2年はサボれる(笑)。もちろん世の中うまくいかないもので、ベースキャンプから頂上行って帰る10日間で体重が10㎏減って本当に運よく生きて帰れたという状態でした。ですが、登ってる最中、ふと今度は80歳でまた登ってみようとまだ頂上も行かないうちに思ったんですよ(笑)。今回80歳でエベレスト登って、世界に14座ある8000m峰に最高齢で登頂したのがギネス記録になりました。山の世界で、誰もしなかったことをやってみたいという漠然とした夢が叶ったんです。いま日本は超高齢化時代を迎え、100歳以上が5万人くらいいる時代ですが、そのほとんどが寝たきりか、介護が必要な状態。僕自身を振り返ってみても、目標なく人生を諦めると、長生きはできても病気になったり、老衰になる。アンチエイジング、年に負けないで元気で遊べ、仕事もできるみたいな高齢者が増えないと。僕がエベレスト80歳で登ったというのは、結果として、人にそういう勇気だとか元気だとか生きていくうえでの大事な要素を、少しは与えられたのかなと。この先どのくらい生きれるか知らんけどもね(笑)。(了)

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三浦雄一郎
みうら・ゆういちろう/1932年生まれ。プロスキーヤー、登山家。3度のエベレスト登頂。

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SHINGO WAKAGI
text/
KUNICHI NOMURA

本記事は雑誌BRUTUS772号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は772号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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