アート

1万年前から変わらぬ極北の暮らしを追って。

BRUTUSCOPE

No. 772(2014.02.15発行)
日本一の「お取り寄せ」最終案内
©Nao Tsuda
©Nao Tsuda

写真家・津田直がサーメ人を追って見たものとは。

境界線を引き直す作業をしている」
 世界中を旅して写真を撮ることについて、写真家の津田直さんは、前にそう言っていた。国境や言葉が人や場所を分けてしまうが、それらの名がつく前にはどんな風景が広がり、どんな人々のつながりがあったのだろうか。津田さんは、世界を歩き回り現地の人たちの話を聞き、人と自然の営みに目を向ける。
 POSTで開催されている個展『SAMELAND』のテーマは、極北のランドスケープとそこに住む先住民族サーメ人だ。2012年の夏にフィンランドノルウェーを旅して巡った際の風景やサーメ人のポートレートを展示する。
 旅の経緯について、津田さんはこう語る。
「資本主義の世の中であっても、受け継いでいかなくてはいけない思想を持つ小さな存在に、常に目を向けていたいと思う。北極圏に住むサーメ人は1万年前から同じような、自然と密接な暮らしをしている。どのようにして世代を超えて受け継いできたのかを知りたかった」
 サーメ人と対話をしていく中で、ヨイクの存在を知る。ヨイクとは歌のようだが歌ではないコミュニケーションの手段。言葉ではなく抑揚だけで祈りや気持ちを伝え合う、サーメ人のアイデンティティを支えるものだ。津田さんはサーメ人との対話を振り返ってこう言う。
「サーメ人として生きるということはどういうことなのかを人々と話しました。中でも、言語を受け継ぐということが重要であり、同時にその難しさも感じた。ヨイクは彼らの文化には欠かせないもので、人だけではなく、動物や自然と対話する手段でもあったようです」
 フィンランドノルウェーという国名ではなく、サーメランド。津田さんが引き直した境界線の隙間から漂ってくるものを感じ取りたい。

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写真集『SAMELAND』

本展の発表に合わせ、limArtより、サーメランドでの写真を収めた写真集が発売される。アートディレクションは田中義久、詩人で比較文学者の管啓次郎が文章を手がける。limArt/2,800円。

展覧会『SAMELAND』

サーメ人を追ってフィンランドノルウェーを巡り、ランドスケープとサーメ人のポートレートを展示。POST(東京都渋谷区恵比寿南2−10−3 1F☎03・3713・
8670)で3月6日まで開催。12時〜20時。月曜休。http://www.post-books.info

本記事は雑誌BRUTUS772号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は772号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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