世界が注目しています。元仏鉄道車庫を再利用した複合文化施設、登場!
パリは、どこもかしこもシャンゼリゼみたいなわけじゃない。観光が重要財源の町とはいえ、市内には観光客は訪れない寂れた地区もある。しかし、こういったエリアが今穴場。景観法により新たな建設が許されない中心部と違い、現代のニーズや環境問題を熟慮する新建築の実現が可能だからだ。
2013年、東駅の北側、18区に現れた〈ホール・パジョル〉は、格安の宿泊施設、カフェ、レストラン、図書館、劇場、広大な庭と公園が一体となったパリ市の新複合施設だ。1920年代築の列車収納庫の鉄とガラスの外装を残し、内部に木造の現代建築を入れ込む設計は、新時代の公共建築に取り組む建築家、フランソワーズ=エレーヌ・ジュルダの大胆なアイデア。東西に長い建物の南面は遮るものなく開けていて、日当たりの良さは抜群。ガラス屋根の下に広がる庭園やカフェのテラスは、もちろん市民にも開放されており、目下、地元民の隠れ家的アドレスに。
さらに、屋根(ガラス張りの連続斜面)にはソーラーパネルを設置し、施設内のエネルギー源を確保した。既存建築をクリーンエネルギーに替え、無料の市営図書館や多目的劇場ホール、憩いの場を併せ持つことで町おこしにも繋がる。また、快適なユースホステルは、パリのホテル価格の高騰に悩む世界の若者たちにはありがたい。世界各地で古くなった鉄道施設の再利用計画が持ち上がっているが、ぜひ参考にしてほしい施設だ。

ホール・パジョル
Paris
シーズンによるが、1泊約30ユーロ~で利用できる清潔な客室は破格。●20, rue Pajol 75018 Paris。Auberge de Jeunesse Paris Pajol(宿泊施設)☎(33)1・40・38・87・90。http://www.hifrance.org
- photo/
- Kozumi Higaki, 11h45&Axel Tilche-Dahi
- text/
- Chiyo Sagae
- edit/
- Kazumi Yamamoto
本記事は雑誌BRUTUS769号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は769号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。