うずまき別館/シンガポール コピティアム

グルマン温故知新

No. 768(2013.12.02発行)
木の家

旨い料理は不滅です。あの名料理人のあの味が帰ってきた。

レストラン閉店の事情はさまざまだ。客足が絶えないにもかかわらず、閉めることを余儀なくされた店もある。でも、そんな店の情熱溢れる名料理人は、周りが放ってはおかないもの。今夏、店名も新たに復活。あの料理にまた会える、と早くも食通の間で話題の2軒!

赤米と蓮芋の煮込み 料理はすべて10,000円のコースからの一例。赤米を、ふわりとした独特の食感を持つ蓮芋の茎とともに鶏のスープで煮込んだ、なんともやさしい味わいの料理。赤米は蓮芋のほか、旬のさまざまな食材と合わせ、コースの合間にほっと一息つく一皿に。胃が落ち着き、後半の皿に向けてグッと食欲が増す。

海老芋とねぎのスープ煮 この時期、ねっとりとおいしくなる海老芋を、蒸してつぶして成形。鶏の胸肉でとったあっさりとしたスープで、ゆっくりゆっくり煮込んでいき、甘味が増した長ネギと合わせた料理は、中国料理版のお椀といった趣。

柿と安納芋の炒め 柳沼さんが西安を訪れた時に、屋台で売られていた渋柿のおやつから思いついた一皿。安納芋をとろりとするまで炒め、ギリギリまで熟した渋柿の自然な甘味をまとわせて作る、ほかではきっと出会えない炒め物。

うずまき別館

赤坂

別館の主は、元〈ロンフウフォン〉のシェフ!

 扉を開けると、目に飛び込んでくるのは、階下にある4人掛けのテーブル一つ。カウンターを見れば、立っているのは、予約が取れないことで有名だった中国料理店〈ロンフウフォン〉の柳沼哲哉シェフではないですか。体調を崩して5年近く休んでいたが、「いつまでも遊んでいるわけにいかないので」と、縁あって、赤坂の人気店〈うずまき〉の別館として再始動。
 今度は1日1組限定で、10〜12皿のコースのみだ。料理もサービスも柳沼さん一人で、時にはカウンター越しに食材を見せてくれることも。が、ほかにない、野菜が活きた“柳沼料理”は変わらない。例えば西安の料理から発想を得たという、柿と安納芋の炒め。油や“醤”をたっぷりまとった、いわゆる中国料理の炒め物とは正反対。素材そのものを“醤”のように絡めていて、柿や芋の甘さが実にやさしい。定休日に、みちの駅を巡って旬の食材探し。作られる一期一会の皿は、体に染み渡る。

ペナンスタイル アッサム・イカン・ケパラ(魚の頭) タイのトムヤムクンを思わせる、酸っぱ辛いペナン料理。魚の頭のダシが出たスープは、独特の塩気と、現地から取り寄せているキノコで出す酸味、そしてビシッと効いた唐辛子の辛さが渾然一体。パイナップルやオクラで辛さをしのぎつつ楽しむ、パンチの効いた一皿。2,800円(ハーフ1,600円もあり)。

ココナッツライスセット ナシレマと呼ばれる、ペナンを含むマレーでお馴染みの朝食。ココナッツミルクでふわりと炊いた甘い香りのご飯に、自家製のサンバルソースを使ったエビと生揚げの辛い炒め物がワンプレートで。900円。

海南鶏飯 言わずと知れたシンガポール名物。野村さんが、名店で教わったという鶏肉の火入れが絶妙。骨の中心部分を赤く、火が入っていない状態に仕上げるのがコツだそうで、肉がしっとり、コラーゲンの層も美しい。1,200円。

シンガポール コピティアム

●八丁堀

シンガポール料理の老舗が進化して再始動。

「ここに骨を埋める覚悟でやってみようかと」と、店主の野村寿秋さん。30年近く続けてきた〈シンガポール・シーフード・エンポーリアム〉を、物件の契約切れで閉めて2年余。常連客の“またやってよ”の声に後押しされ、八丁堀に店を構えた。
 名物・海南鶏飯は、客が待っていたのも納得の味。コラーゲン含め、旨味が見事に閉じ込められていて、食感もしっとり。が、シンガポール愛溢れる野村さんは、そこにとどまらない。かの地を訪れ、料理の変貌を実感。だからこそ、オーセンティックな料理を見直したいと「ルーツになっているものが多い」というマレーシア・ペナン島の屋台の味にも力を注ぐ。自家製の辛いサンバルソースで作る炒め物とココナッツライスの皿もその一つ。辛い料理が多いが、その奥に潜む酸味や塩気、甘さは多彩。どれも食べ進むほどに味わい深い。そして、野村夫妻のホスピタリティ……。実はこれを待ってたファンも多いのだ。

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うずまき別館
赤坂
夜、飲んで、食べて、1人15,000円前後。
グルメな彼女との、とっておきのデートに。
03・3583・2073

●東京都港区赤坂3−6−6赤坂ビルB1。11時〜15時(お弁当、お惣菜販売)、17時30分〜22時。日曜・祝日休。交通:東京メトロ千代田線赤坂駅1番出口を出て、外堀通り方面へ。外堀通りに出る1本手前の道を左折。徒歩3分。昼は600円と800円の惣菜(ご飯付きは+150円)を販売。夜は1日1組(2〜4名)限定で、料理はおまかせコース10,000円が基本。人数によって魚1尾を使った大皿料理が入ったり、パンチの効いた料理が一皿入ることもあるが、旬を重視したコースなので、内容は日々、替わる。ビールは小ビン550円、紹興酒1合1,200円。ワインはテーブル席背後の冷蔵庫からセルフサービスで。価格はボトルに表記。

シンガポール コピティアム
●八丁堀
大いに飲んで、食べて1人3,000〜5,000円。
会社の同僚女子を誘えば、株が上がること必至⁉
03・6280・3442

●東京都中央区八丁堀2−18−5 1F。11時30分〜14時30分、18時〜21時30分LO。土曜は夜のみで要予約。日曜・祝日休。交通:東京メトロ日比谷線八丁堀駅A5出口から徒歩2分。新大橋通りの1本裏手の道沿いに。ランチは、海南鶏飯800円、バクテーライス1,000円ほか50種近く。ディナーは、アラカルトのほか3,500円〜のコース(2名から)もあり。海南鶏飯と並ぶ名物ナシゴレンは900円、梅干しの酸味が効いたペナン風酸辛スープ麺1,000円などグランドメニューは100種以上。スパイスにシビれる南インドスタイルのカレーも800円から6種。ハウスワインはボトル2,500円、グラス500円。タイガービール600円。

photo/
Naoki Tani
text/
齋藤優子

本記事は雑誌BRUTUS768号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は768号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.768
木の家(2013.12.02発行)

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