宇宙空間をさまよう乗務員たちの生存劇『ゼロ・グラビティ』は、なぜこれほどの称賛を集めるのか?
"映画史に残る傑作"とか、"『エイリアン』や『ブレードランナー』に比肩するSF映画"とか、"『アバター』後の最も重要な3D作品"とか、どれだけ絶賛してもし足りないのが『ゼロ・グラビティ』だ。
船外活動中にスペースシャトルが大破し、アウタースペースに取り残された乗組員2人のサバイバル劇。尺は91分、登場人物は2人(もっと言うと実はほとんど1人)と骨格は簡素ながら、圧倒的な観応えがあるのは、まず土台となる脚本が"危機に立ち向かう主人公の成長物語"としてよく練り込まれているからだ。
そして、シンプルな骨組みを覆う、かつて観たことのないような革新的映像の数々。カメラは飛行士と共に無重力空間を漂い、これまでではあり得なかった動きやスピードで宇宙の様子をありありと捉える。するとVFXを駆使したバーチャルな映像を観ているというより、実際に宇宙空間で起きた出来事を目の当たりにしているような、異様な生々しさと緊迫感が生まれるのだ。とりわけ最高水準の映像と音に陶酔できるIMAX版の臨場感や興奮ときたら。
生命の尊厳を謳う上質なドラマと、そんな体感型アトラクション的快楽の融合。いやはや、とんでもない映画を作り上げたもんだ、アルフォンソ・キュアロンは。
- text/
- Yusuke Monma
本記事は雑誌BRUTUS768号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は768号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。