アート

長尾智子×鈴木るみ子×岡尾美代子が明かす「私のヨーコ」。

BRUTUSCOPE

No. 767(2013.11.15発行)
小津の入口
エキシビションに出展予定の作品から。今年撮影。©Yoko Takahashi
エキシビションに出展予定の作品から。1995年にキューバで撮影。©Yoko Takahashi
サンフランシスコ在住の写真家・高橋ヨーコが渡米後初の写真展を開催。
 2010年に渡米。自ら編集するビジュアルジャーナル『ONTARIO』の刊行等、創作活動を謳歌する写真家高橋ヨーコ11月日本で写真展を開催する。そこで、彼女と縁の深い女3人に集まってもらった。人柄もおしゃれも写真も唯一無二、それぞれの「私のヨーコ」を語り合った。
鈴木るみこ ヨーコちゃんが渡米を決めた時、「このまま日本で仕事をしてるとすごい速さで時間が過ぎ去る。時間を止めたい」って言ってたのが、とても印象的。
岡尾美代子 海外での撮影も多くて、地球規模の移動を繰り返してたから。たまに日本にいる時は、「来日中」って言われてたね。
長尾智子 私は雑誌の連載の撮影をお願いしてたから、日程を押さえるのにひと苦労だった。
鈴木 ファッションが中心だったヨーコさんに、料理を撮ってもらおうと思ったのはどうして?
長尾 雑誌を斜め読みしてても必ず手が止まる写真、それがヨーコさんのだった。ファッションでも、ただ服を撮っているわけじゃない。この人に自分の料理を撮ってもらったらどうなるだろうってね。
岡尾 私も何かの雑誌で先に作品を見ていて、シベリア鉄道かな、かわいいカーテンがかかった車窓の写真。はーって思った。
鈴木 その後、一緒に仕事を?
岡尾 確か初めての時、袖を自分で短く切った服を着てて驚いた。
長尾 私が初めて会った時もボロボロにほつれたスエットを着てたわよ。そこまでやって、ようやく着心地がよくなるんだって。
岡尾 何事にもスタイルがあるんだよね。あと、ヨーコちゃんといえば黒メガネ。
鈴木 長尾さんは食育もしてました。彼女、筋金入りの偏食だから。
長尾 まあ、軽くね。生のヒジキをそのまま食べたりしてたから、せめてゆでなさいとか。
鈴木 私はその連載の編集を一時期担当してたんだけど、ヨーコちゃん、自分が食べられないものが出てくると後ずさりしちゃうから、すごく引いた写真になる(笑)。
長尾 ある時なんて材料の生の牛肉に近寄れなくて、代わりに牛のお人形を撮ってもらったわよ。
鈴木 人間も実は苦手で、フォトジェニックじゃない人には冷たい(笑)。でも岡尾さんを撮るのは好きみたい。コグマだからって。
岡尾 へ、へんな人です。
長尾 人見知りなのよね。でも同類と感じた人とは一瞬にして打ち解ける。外国人でも、話さずして。そういう瞬間を何度か目撃したな。
岡尾 一緒にをしてても、ヨーコちゃんの視線の先を追っていくと必ず面白いものがあって。
鈴木 例えばどんな?
岡尾 ちょっと……すみっこ的な。
長尾 みんなに見えてないものを見てる感じはあるわよね。
岡尾 く、黒メガネ!?
鈴木 私は、この前「妖精を探す」という企画の撮影をヨーコちゃんにお願いしたんだけど、妖精を本気で撮れるのは彼女だけだと。
岡尾 あれは、写ってました。
鈴木 ちっこい蜘蛛の巣を「妖精のハンモック発見」って言って、うれしそうに撮ってた。
岡尾 ひそんでるおはなしを撮れる人なんだよね。
長尾 だからね、ぽつんとしたヨーコさん的な写真を撮る若い人は増えたけど、それはただの「ぽつん」であっておはなしはないの。
鈴木 ヨーコちゃんの場合は、あいだに満ちてるものがある。
長尾 かわいいものも見つけるけど、きれいごとじゃないものも撮ってる。それが彼女のフィルターを通すとあんなふうにチャーミングに見えてくるというのは、やっぱり愛情深い人だとも思うわ。
鈴木 あと、過酷な状況で幾度となく撮影してもらった経験からしみじみ思うのが、その技術の高さ。
長尾 感性だけじゃないのよね。
鈴木 彼女の友人にiPhoneの開発者がいて、その人がヨーコちゃんがiPhoneで撮ったブルータスの写真特集(764号)の表紙を見て、ここまで撮れるのかと驚いたそう。
岡尾 『ONTARIO』を見てると、アメリカに行ってから、どんどん自由になっているのがわかるね。
鈴木 ほんとうのヨーコ、だね。
長尾 しばらく会ってないし、また写真を撮ってもらう時期が来たかな。いまは何を食べてるか聞いて、食育もしよう。
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『Changing The Same』

この20年間に5回訪れたキューバをメインに、で撮りためた写真で構成する写真展。11月23日〜12月6日に開催。『ONTARIO』No2.も販売。●COMPLEX UNIVERSAL FURNITURESUPPLY/東京都目黒区三田2−10−35 1F☎03・3760・0111。11時〜19時(土・日12時〜18時)。無休。

長尾智子
ながお・ともこ/フードコーディネーター。『シュプール』の料理連載で、ヨーコさんと11年間コンビを組む。『お料理コーディネイト帖』(集英社)、『長尾智子の料理1、2、3』(暮しの手帖社)など著書多数。

鈴木るみ子
すずき・るみこ/編集者。英国の小さな村のパンケーキ競走取材からムーミンの島、妖精探しのに至る、『クウネル』の浮き世離れ企画の大半をヨーコさんに依頼。ともに世界中(のすみっこ)をしている。

岡尾美代子
おかお・みよこ/スタイリスト。ヨーコさんとの仕事はアオハタジャムCF、共著『シネマテーブル』も。〈ロングトラックフーズ〉で『ONTARIO』も扱う。近著に『肌ざわりの良いもの』(産業編集センター)。

photo/
Mai Kise (portrait)
text/
Rumiko Suzuki
edit/
Kazumi Yamamoto

本記事は雑誌BRUTUS767号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は767号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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小津の入口(2013.11.15発行)

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