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ほぼ日とBRUTUS。“他校の友達”と作った愉快な特集。

自分史上最高ブルータス #6 糸井重里(「ほぼ日」代表)

No. 679(2010.02.15発行)
ほぼ日と作った、吉本隆明特集
No.679 2010年 2/15号 『BRUTUS』 特集「ほぼ日と作った、吉本隆明特集」

BRUTUS編集スタッフによる2ヵ月間の密着取材を受けた「今日の糸井重里」特集や、自身の偏愛を語った「あんこ好き。」や「とんかつ好き。」特集。語りたいことは山ほどあれど、糸井さんの特別な一冊は、ほぼ日とBRUTUS、みんなで力を出し合って作った思い出深い特集でした。

ほぼ日がネギを刻み、BRUTUSが味付けしたチャーハン。

 この特集はほぼ日とBRUTUS合同で作った号。以前にも「全国民に捧げる読売巨人軍」特集や「三谷幸喜」特集でも一部協力をしたことはあったのですが、丸ごと一冊っていうのはこれが初めてで、みんなでわいわいやるのが何より楽しかったですね。この特集を作る前からほぼ日ではたびたび吉本隆明さんを取り上げていて、材料はたくさんあったんです。自社で発信しながら、なぜあえてBRUTUSで特集をしたかというと、やっぱりBRUTUSだからできることっていうのがあるんですよね。たとえば冒頭ページにAKBを持ってくるなんて、ほぼ日ではできなかった。あとは「人はなぜ、悩むのか?」など、ふだん気にも留めないけど必ず誰の中にもある根源的な疑問を入り口に吉本さんの思考を解剖・分解していくという構成もBRUTUSらしいやり方でした。チャーハン作りでいうと、ほぼ日が材料を用意してネギとか刻んでおいて、そこからBRUTUSがほかの店ではできない味付けをする、そういう感じ。みんなが持っているいいものを出し合って作ったからこそできた特集だと思います。

吉本隆明という人を知った日のこと。

 一番印象に残っているのはご本人のインタビュー取材に伺ったときのこと。そのとき撮影した吉本さんの表情が表紙になっているんですけど、吉本さんが縁側に足を出して、それをカメラマンが庭から撮影したんです。僕はその様子を少し離れた場所から見ていたんですけど、その吉本さんがなんだか近所のおじいちゃんみたいに見えて、すごく親近感が湧いたんです。そのとき僕は、「良寛さんであろうと親鸞さんであろうと、みんな“そこにいる人”なんだよな」と思うと同時に、「でも、やっぱりすごいんだよなあ……」とも思った。それは今この特集を読み返しても強く思うことで、それが吉本隆明という人の稀有なところであり魅力だし、彼の言葉の中にもそれを感じられる要素がたくさんある。その感じを読者にも味わってもらえたら最高だなと思います。

大事なのは、冗談みたいなことから生まれるもの。

 この特集は僕やほぼ日のスタッフ、そしてBRUTUS編集者が「こういうことができたらいいよね」なんて何気なく話をしたことから生まれたものです。雑誌作りだけでなく、どんな仕事に対してもそうだけれど、冗談みたいに言っていることを大事にするって、忘れちゃいけない。「瓢箪から駒」ならぬ「冗談からまこと」。そのために大切なのは、冗談が言い合えて、一緒に面白いことをやろうよとなれる仲間。僕にとってBRUTUSは学校の違う友達みたいな感じなんです(中学じゃなくて、高校ね)。同じ学校の人からは「何で知り合ったの?」とか不思議がられて、自分たちも「何でだっけ?」なんて言い合っているんだけど、とにかくなんだか馬が合う。そんな仲間と一緒に忘れがたい特集を作れたことはとてもいい思い出だし、この先も一緒にやりたい愉快なアイデアが、たくさんあるんです。

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いとい・しげさと/1948年群馬県生まれ。「ほぼ日」代表。コピーライター。作詞や文筆、ゲーム制作などの分野でも活躍。1998年にウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げる。コンテンツ制作のほか「ほぼ日手帳」「カレーの恩返し」といった生活関連商品の開発販売、犬や猫とひとが親しくなるSNSアプリ「ドコノコ」開発、「生活のたのしみ展」の開催、「ほぼ日の学校」開校など幅広く展開。2019年から、渋谷PARCOに「ほぼ日カルチャん」と「ほぼ日曜日」の2つのスペースを出店中。

本記事は雑誌BRUTUS679号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は679号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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ほぼ日と作った、吉本隆明特集(2010.02.15発行)

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