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「『都市』で暮らす者がより面白く、たくましく暮らすための『手引き』」

自分史上最高ブルータス #3 森岡督行 「森岡書店」店主

BRUTUS.jpオリジナル記事
No.307 1993年 11/15号『BRUTUS 』 特集「独創空間に住みたい」

本や骨董関係の特集のみならず、過去にはグルーミング特集の「薄毛対談(‼︎)」にまで参加してくれた森岡督行さん。「BRUTUSに出演できるのは何より誇らしい」という言葉の奥底には、中学時代から抱き続ける特別な思いがありました。

「東京への憧れを強烈にかき立てられた特集です」

 私がはじめてBRUTUSを買ったのは1989年、中学生の頃だったと思います。家から学校までの通学路に松田書店という本屋ができて、それまで山形県の片田舎では手に入らなかった、いわゆる「東京カルチャー」を扱う雑誌が買えるようになったんです。それはもう興奮しまして、小遣いのほとんどを雑誌につぎ込んでいました。まだインターネットが生活の隅々に浸透する以前の時代でしたので、BRUTUSが紹介する見たことのなかったアート、服や靴、建築、家具、写真、ショップ、レストラン、都市などを指をくわえて見ていました。1993年の『独創空間に住みたい』は、東京への憧れを強烈にかき立てられた特集です。都築響一さんが東京で自分らしく働く人々の自室を取材した「パーフェクト・ルームズ」の企画を読んで、「こんなマンションに住んでいる人のような職業につきたい!」と強く思ったことを鮮明に覚えています。「自分の趣味を仕事にしたような働き方」というのでしょうか。

「野性的なところがある雑誌だと感じます」

 今、私は幸いにも自分が好きな「本」を扱う仕事をしていますが、このとき感じた強い思いが今の自分の基本的な考え方のもとになったのかもしれません。じつはこれ、てっきりまだ山形にいた中学生か高校生のときに読んだものだと思っていたのですが、今回改めて手に取ってみると、実際はすでに上京し、中野でひとり暮らしをしていた1993年に読んだものだったということがわかりました。なぜこんな錯覚が起きたのだろうと考えると、きっとこの特集を読んだ20歳そこそこのときも中学生の頃に感じていたのと同じように、BRUTUSの取り上げる人、そのライフスタイルに強く憧れていたからじゃないかと想像します。田舎の少年のような気持ちを抱いていたのかもしれませんね。
 私は常々、自分の「好き」を仕事にしていくというのは、どこか狩人的な生き方だと感じています。じっとしていても仕事になりませんから、色々な場所へ足を運んで、いつも誰かと会ったり、何かを探したりしている。ときには断崖や急流みたいな危ない場所もあって、そこをサバイブしていくわけです。BRUTUSは名前の由来からして野性的なところがある雑誌だと感じます。「都市」で生きる者がより面白く暮らすための情報が詰まっていて、それが思いもよらない切り口の特集でくる。そこに自分の知らない世界が広がっている。それは私のような狩人的生き方をする者にとって、なくてはならない人生の「手引き」のようなものなのです。

特集「パーフェクト・ルームズ。」は編集者の都築響一 氏が写真と文を担当。代官山のマンション<パーフェクト・ルーム>を舞台に個性的な暮らしに迫る。
若手のデザイナー、カメラマン、スタイリスト、モデル……住居にする人もいれば、アトリエやショップ、仕事場とする人もいる。写真は建築家とイラストレーターの共同オフィス。

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もりおか・よしゆき/1974年山形県生まれ。。著書に『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』(平凡社)、『荒野の古本屋』(晶文社)など。企画協力した展覧会に「そばにいる工芸」(資生堂ギャラリー)、「畏敬と工芸」(山形ビエンナーレ)などがある。「一冊の本を売る書店」がテーマの森岡書店代表。『工芸青』(新潮社)編集委員でもある。2020年5月には伊藤写真集GINZA TOKYO 1964』を出版した。

Text/Yuriko Kobayashi
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