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村上小説の妄想食卓「鼠の別荘で作る冬ごもりの料理」

きりりと角の立ったサンドイッチ、ぴったりのタイミングでゆで上がるパスタ、グラスに注がれるウイスキー……。そそる「食」のシーンもまた、村上作品の魅力だ。印象に残る名シーンをぎゅっと詰め込んだ食卓はどんな風景になるのだろう。時代背景や前後の文脈をじっくりと読み込んで具現化した「妄想食卓」へようこそ。

Photo: Satoshi Nagare / Styling: Tomomi Nagayama / Cooking: Shizue Ota / Text: Sawako Akune / Edit: Masae Wako

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『羊をめぐる冒険』下

もしここで一冬を越さねばならなくなったとしても少くともパンの心配だけはしなくて済みそうだった。米もスパゲティーもうんざりするほどある。
 僕は夕方にパンとサラダとハム・エッグを食べ、食後に桃の缶詰を食べた。
 翌朝僕は米を炊き、鮭の缶詰とわかめとマッシュルームを使ってピラフを作った。
 昼には冷凍してあったチーズ・ケーキを食べ、濃いミルク・ティーを飲んだ。
 三時にはヘイゼルナッツ・アイスクリームにコアントロをかけて食べた。
 夕方には骨つきの鶏肉をオーブンで焼き、キャンベルのスープを飲んだ。

 僕は再び太りつつある。

「鼠の別荘で作る冬ごもりの料理」

作品の終盤、親友の「鼠」が所有する山中の別荘を訪れた主人公。鼠本人は不在だが「一冬越せるだけの燃料と食品は残っ」ていて、主人公はここで料理を作っては食べ、本を読んだり、ジョギングしたりして過ごす。一風変わった組み合わせのピラフは、あり合わせの食材で作る山荘ならでは。ログハウスにふさわしい、ぽってりと重ためのプレートに盛り付けた。

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